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第2話 5年の歳月
二人掛かりで白髪の男性をストレッチャーに乗せ、道路に停めた搬送車両に乗せる。
この車は、民間の救急車で。国土交通省の認可を受け、民間患者等の搬送車両として使われていた。あくまでも、民間救急サービスを提供する事業であって、緊急車両ではない。
それでも、オレ達乗務員は消防庁発行の乗務員適認証を所持していて、それなりの訓練を受け資格を持っている。
乗り込んだ車両の中で、仰向けに寝る男性が辛くないよう、膝の下に枕を差し込んであげるとオレの顔を見て微笑んだが、その目尻のしわは5年の歳月を物語っていた。
9月といっても外はまだ暑く、少しだけ外気に触れただけでも男性の生気は吸いとられるようで、このままあと2時間もかかる病院にたどり着けるのかと心配になる。
オレの名は、内田 智也(トモヤ)
この仕事に就いて5年目で、今年29歳になった。
男性の横で、心配そうに手を繋いでいるのは、藤谷 美久(ヨシヒサ)くん。
オレと9歳離れているといっていたから、今年20歳になったのか……。
オレたちが初めて出会ったのは、5年前のちょうど今頃。
あの時も、庭の一角では桔梗の花が群生していたのを覚えている。
……あれからもう5年も経ってしまったんだな………
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