17 / 153
第17話 帰路へ
これから2時間かけて来た道を戻る。
きっと疲れた事だろうと、ストレッチャーの上を片付けながら
「良かったらここに寝転んでもいいよ。着いたら、ちゃんと起こしてあげるから。」
と、ヨシヒサくんの顔を見て言った。
「え、マジでいいの?俺本気で寝ちゃうよ?!」
そう言ったヨシヒサくんの顔つきが、さっきまでとは違っているようで不思議に思った。
まるで別人のような言葉使いだし。
「ぼく」から「おれ」になっている・・・
「いいよ、寝てて。」
上の毛布を取ってあげると、寝転ぶ彼の身体にそっと掛ける。
それから、明子さんのお弁当を開けると、おにぎりを取り出して長野さんに渡した。
長野さんは運転しながらおにぎりを頬張り、まだニヤニヤしている。
「長野さん大丈夫ですか?ニヤついてるとご飯が変なとこに入りますよ!」
オレが言うが、気にする様子も無くバクバクと頬張っていた。
オレも、おにぎりを手に取ると口へと運ぶ。
手作りのおにぎりなんて何年ぶりに食べただろう・・・
自炊しているけど、自分でおにぎりを握るなんてしないもんな、と思いつつ、目の前で眠るヨシヒサくんに目をやった。
朝の甲斐甲斐しい姿は消え、今は普通の大学生のようで、こっちが素のカレなんだろうと思う。叔父さんと接する時は、完全に小さな子供の様だったし、それだけ慕っていたって事だろう。
羨ましいな・・・
オレが15歳の時に、あんな叔父さんがいてくれたら・・・・
おにぎりを頬張りながら窓の外を眺めると、抜けるような青空が広がっていた。
ともだちにシェアしよう!