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第16話 お願い

 隆哉さんとの約束通り、明子さんの家で待つヨシヒサくんを迎えに行く車の中だが、長野さんが運転しながらニヤニヤしているから気味が悪くて。 「なんですか?キモイですよ、一人で運転しながらニヤついて。」 オレは助手席で言ったが、長野さんはまっすぐ前を見ながら 「内田くん、凄いお願いされちゃって大丈夫?あの子、なんだかな~・・・」 言いかけて止めるから余計に気味悪くなるが、長野さんのいう事も分かるような気がする。 あの場では断れなかったのが事実だけれど、オレと藤谷家とは縁もゆかりもない。 オレにヨシヒサくんを気にかけてやってほしいと言われても、何の接点も無いんだ。 どうしろっていうんだろう・・・・? 白いおうちに着いたのは昼頃だったが、このまま元の場所へと帰るつもりだった。 それを知ってか、明子さんが途中で食べて下さいと言ってお弁当を持たせてくれた。 「本当にありがとうございました。兄に残された時間は少ないですが、きっと家族といい思い出を作れると思います。」 明子さんはそう言った。隆哉さんは、奥さんや子供とどのぐらいの期間離れ離れに過ごしてきたんだろうか。 ずっとヨシヒサくんに付きっきりだったんだろうか・・・・ 「ミク、・・・元気でね。いつでもここへ来ていいから。ちゃんとご飯食べるのよ。」 「うん、明子さんもお元気で。僕は大丈夫だから、心配しないでください。」 二人のやり取りを聞きながらさっきの姿が思い出されて、落ち着いてくれてよかったと思った。沈んだ気持ちのままじゃ、オレたちも帰りの車の中で、なんと声を掛けようか悩むところだ。無言の車中程気まずい事は無いからな・・・ 「では、失礼します。ありがとうございました。」 「さようなら。ミクの事お願いしますね!」 明子さんにまで念押しされた気がするが、家に辿りつくまで、という意味だろうと思った。 ヨシヒサくんは、明子さんに手を振ると車に乗り込み、オレはその横の椅子に座ると窓から顔を出して会釈をする。

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