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第15話 お別れ

「着きましたよ。」 長野さんの言葉で、オレはホッとする。 自宅を出てから2時間と少しなのに、もう半日を過ごしたような気分だった。 「お疲れ様でした。私たちはここでお別れしますが、・・・」といって、言葉に詰まる。 お別れ・・・何気ない言葉が、ここでは重い一言になった。 今生の別れを意味するのだから・・・ 「できるだけ、ゆっくりお過ごしください。・・・ヨシヒサくんは、ちゃんとご自宅へ送り届けますから、心配しないでくださいね。」 そういって長野さん共々挨拶を交わし、待っていてくれた病院スタッフへと引き継ぎをした。 「ありがとう・・・あなたのお名前をもう一度教えてもらっていいですか?」 隆哉さんがオレの顔を見て聞いたから、「内田といいます。内田 智也。平凡な名前でしょ?」と、笑いながら答える。 「ありがとう内田くん、話を聞いてもらって・・・。」 「いいえ、とんでもないですよ。こちらこそ疲れさせてしまってすみません。」 オレはそういうと軽く頭を下げた。 病院のストレッチャーに躰を移し、スタッフに囲まれた隆哉さんを見送ろうと長野さんと二人並んだ時だった。 「内田くん、ミクの事頼みます。時々、気にかけてやって下さい。」 思いもしない言葉にオレは驚きを隠せない。 いくら二度目の再会とはいえ、なんの関係もないオレに頼む、とか・・・・・ 「や、あの・・・はい、分かりました。時々覗いてみますよ。だから心配なさらないでください。」 内心では困っていたが、今はそう言うしかないような気がして・・・ 少しでも、不安や心配事を減らしたかった。 「ありがとう。お願いします。」 そういうと、隆哉さんは病院の中へと消えて行く。 残されたのは、静かな病院の入口でたたずむオレと、不思議そうにオレの顔を覗きこむ長野さんの二人だけだった。

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