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第19話 間違えた
「内田くん、トイレ寄ろうか?」
長野さんが、バックミラー越しにオレの顔を覗いて言った。
「え…?」
声を掛けられて、遠い景色を見ていたオレの気持ちは引き戻される。
「ああ、そうですね。お願いします。」
変だな、急に昔を思い出すなんて……。
オレは、ぐるりと首を回してシートベルトを外すと、ヨシヒサくんが眠っている横をそっと歩き、彼を起こさない様に外へと出た。
観光客らしき一行の後についてトイレに駆け込むと、用を足しながらふぅ~っとため息をつく。もう何年も思い出したりしなかったのに・・・・
自動販売機でお茶とコーヒーを買うと車に戻った。
長野さんはタバコを吸いに行ったのか、運転席にはいなかったのでオレは後ろの席に戻ったが、物音に気付いたヨシヒサくんが、ふぅあああ~っと伸びをしてこちらを見る。
「あ、ごめん起こした・・・」と頭を下げると、「いいよ。なんか喉乾いたし・・・」
と言う。
オレがお茶とコーヒーを差し出しながら
「どっち飲みたい?」と聞くと、「お茶」と指をさした。
「え、・・・てっきりコーヒーっていうかと思った。」
オレはお茶のペットボトルを差し出すと言ったが、本当は自分用にお茶を買ったんだ。
実はコーヒーは苦手。あの独特の苦みが口の中に広がると、なんとも言えない気持ちになる。
「ありがと。」
ヨシヒサくんはそう言って蓋を開けると、おいしそうにごくごくと飲む。
「あれ、あなたは?コーヒー買ってきたんでしょ?!飲まないの?」
「や、・・・後で飲むから。」
「そう。」
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