20 / 153

第20話 コーヒー苦手なオレ

 オレは後悔した。 お茶を二本買えばよかったのに。どうして彼がコーヒーを飲むって思ったんだろう・・・ その時、長野さんが車に戻ってきた。 「内田くん、お茶買ってきたよ。きみ、コーヒー苦手だろ?」 と言いながら乗り込んで来て、後ろのオレたちに向かって言う。 「あ・・・・」 お茶を手にしたヨシヒサくんは、そのまま顔だけをオレに向けた。 なんだかバツが悪いっていうか・・・・長野さん、そういう事は言わなくていいから。と思いながらも、「はは、ありがとうございます。」といってお茶を受け取った。 ヨシヒサくんも、何も言わずお茶を口にしている。 「じゃあ、出発しま~す。」 長野さんの掛け声で、車はまた動き出すが、今度はヨシヒサくんがオレの横に座っていた。もう寝なくてもいいんだろう。自分で毛布を畳むと上の棚に乗せる。 「あ、ありがとう。そのまま置いといてくれていいのに・・・」 オレが言うと、「使ったものは戻さないとね。」と、言った。 案外キレイ好きなんだろうか、家の中も片付いていたし・・・ その後、オレとヨシヒサくんは窓の景色をじっと見たまま、自宅へ着くまでの道のりを無言で過ごした。

ともだちにシェアしよう!