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第29話 独りメシ

 カンカンカンツ・・・ 2階建てのアパートの階段を駆け上がり、一番奥の部屋へと向かう。 築30年のボロアパート。と言ったら失礼だけど、壁は薄く隣の声が丸聞こえ。 それはお互いさまとして、地震が来たらいっぺんで潰れそうな建物は、あまり居心地のいい住処とはいえなかった。 それでも、6畳間に3畳ほどのキッチンがついていて、一応はバストイレ付き。 奨学金で大学へ通い、ここに住み始めてもう10年近く経つ・・・ 大学へは単位を落とさない程度に通い、アルバイト三昧の毎日だったオレは、多分世間的には可哀そうなヤツだったんだろう。 サークルでの女の子との交流もなく、バイト先でもただ図体がデカイだけの男で......。 たまに告白されても、デートでおごるだけの金も持ち合わせていない。大抵は「ワリカンでいいよ」と女の子に気を使われていた。 - あ~あ。自分を卑下するのは止めよう・・・ そう思って、買ってきた夕飯の材料をテーブルに並べると米を研いだ。 ご飯が炊ける間に、野菜を切って残り物の豚肉と炒める。 そこに水を足し、コンソメの素を入れたらジャガイモを大きめに切って投げ込んで煮る。 後は、いい具合に野菜が煮えたら出来上がりだ。 簡単なわが家のひとり飯用献立。と言いながら、これしか作っていない気がする。 取り合えず、なんでも入れておけばいいんだから。 今日は仕事が休みで、朝から洗濯と掃除に追われていたけど、狭い部屋だからすぐに終わってしまった。洗濯も、制服は会社でクリーニングに出すし、家での服はこのジーンズだけ。ジーンズとTシャツがオレの定番。たまに綿シャツを羽織るぐらいだし、そんなにないんだよな。

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