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第30話 再びの…

 スープが出来るまでの間、洗濯物を取り込んで適当にボックスにしまう。 夕方といってもまだ日差しは強くて、目を細めながらなんとなく上空に目をやったが、青空が薄い紫の雲と交わってその隙間から放たれる光を見ると、なんだか心が洗われるようだった。 あの光は人を選ばず、誰にでも見ることができる。 顔に当たった光の熱を感じると、なぜかアイツの事が頭をよぎった。 どうしてだろう、目を閉じるとあの時の顔が浮かぶ。あの、何もかも捨ててしまったような、魂の抜けた瞳。 - 藤谷 美久   「ミク」なんて可愛い呼び名をもらってるわりに、あの変わりようは・・・ カワイイ顔して、あんな酷い事をするなんてな。 どうせなら、庭の雑草でも刈っときゃいいんだ。あんなに草ぼうぼうで。 でも、どうして桔梗だけはきれいに咲かせていたんだろう・・・ 隆哉さんが手入れしていたとは思えないし........。 「大嫌い」って言ってたな。・・・・・どうしてだ? 5年前もあそこには桔梗が咲いていた。きっと昔から咲いているんだ。 桔梗は根っこがどんどん伸びて、結構強いんだ。必ず次の年も咲くって、死んだオフクロが言っていたような気がする。 - 時々気にかけてやってくれ・・・なんて、言われてもなあ・・・。 あんな事があって、オレの顔を見たら気分悪くするだろうし、オレだって嫌われてまで見に行く必要もないしな。 っていうか・・・・なんで、隆哉さんはオレにあんな事を頼んだんだろう。 あの人は、アイツのあんな性格を知っていたんだろうか・・・ 気になりつつも、コンロの鍋がグツグツうるさいから、火を止めてひとりで味気ない夕飯を食べることにした。 - - -  それから暫くして、オレの気がかりがどこかで通じたんだろうか、オレは予期しない事で再び藤谷家へ足を運ぶ事となる。

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