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第38話 お願いが・・・
- 傷跡って、落ちたときのじゃないのかな・・・
不思議に思いつつも、オレはヨシヒサくんを連れて車に乗り込んだ。
彼は車の中で、何もしゃべらないまま。
というか、オレが(ゲイ)という言葉に戸惑っているのが伝わるんだろう。互いにかける言葉が見つからないまま、重い空気だけが漂っていた。
車が藤谷家の前に着くと、オレはドアを開け、後部座席に置いたヨシヒサくんのバッグを取り出す。それから、助手席に座った彼に、ドアを開けて腕を貸してやった。
ヨシヒサくんはオレの腕を掴むと、車から降りてバッグを受け取ろうとしたが、
「家の中まで行きますから、足元暗いし、転んだら大変だ。」
そう言ってオレは彼の背中に手を回すと、足元を確認しながら歩き出した。
「あ、りがとう・・・」
玄関前でお礼を言われるが、契約した終了時間までは、まだもう少しある。
「なにか不自由があれば、今できる事はやりますけど。少し早めに着いちゃったし、買い物とかあれば買ってくる。」と言ってバッグを渡す。
彼は少しばかり考えていたが、
「そうしたら・・・髪の毛洗ってほしいんだけど。」と言った。
「え、・・・はい。それぐらいの時間はあると思うけど、オレでいいんですか?」
「うん、お願いします。他にはちょっと頼めないし・・・」
なんだか含みのある言い方で違和感を覚えたが、オレが申し出た事だし、と思い靴を脱ぐと部屋に上がる。本当は、こんな依頼は受けないんだが、隆哉さんに頼まれた事が気になったオレは、つい受けてしまった。
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