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第37話 傷跡?

 しばらくオレが黙っているので、ヨシヒサくんも黙ってしまう。 オレは、無言のまま病院に着くと、診察券を出したり診察室への付き添いをした。 丁度時間も良かったのか、そんなに待たずに受診出来たので早めに帰る事が出来そうだ。 ホッとした。さっき聞いた事が、未だに頭の中でぐるぐる回っている。 出来れば早めに切り上げて、会社へ戻りたいと思った。 会計も済んだので帰ろうと思い座っているヨシヒサくんの片方の腕を持ち上げた時だ。 「あの、付き添いの方ちょっといいですか?」 看護士に呼び止められて振り返ったが、なんだか空気がおかしい。 「ちょっと先生が、お話あるそうなので.....。」 そう言われ、仕方がないのでヨシヒサくんを残して診察室へと入って行った。 「失礼します。あの・・・何か?」 オレの言葉を聞くと、すぐに医者は眉間にシワを寄せる。 「腕の方は、全治2か月ほどです。」 「・・・はあ、・・・?」 「あなた、彼のお身内の方ですか?」 医者の声色があきらかに変わっていて。 「えっと、身内というか・・・」仕事内容を告げるべきなのか考えていると、医者は小声になって「あの、背中の傷は何ですか?」と訊いてくる。 「・・・は?傷って・・・・?」 オレが不思議そうに言ったから、医者は慌てて「イヤ、分からないならいいんです。新しい傷ではないみたいだから。・・・どうぞ、帰られて結構です。」と言った。

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