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第7話
「悪かった」
犯人の身柄送検後、鬼嶋が謝罪してきた。
「しかし君のおかげで売春行為及び人身売買を行なっていた被疑者数名の逮捕に繋がった。よくやってくれた」
労いの言葉を和久は複雑な気持ちで受け止めていた。
まさか男の正体が変装した鬼嶋だったとは…
なぜすぐに気がつかなかったのだろうか。
あの目は変装していても隠しきれていなかったというのに。
「お役にたててよかったです」
和久はギクシャクとしながら答えた。
正直鬼嶋と顔を合わせるのはかなり気不味い。
なぜなら和久は彼の異常な性癖を知ってしまったからだ。
「櫻井くん。君も知っての通り俺はフェチというやつだ」
突然の告白 になんと答えていいかわからず和久は視線を泳がせた。
「君のその足は俺の理想だ。…だからこれからも…」
至って真面目な鬼嶋の提案に和久は身震いした。
何か得体の知れない沼に引きずり込まれるような気がしてたまらない。
もう二度と浮上できないような深い沼に。
「鬼嶋さん…ま、待って…」
狭いトイレの個室に押し込められた和久は、鼻息荒くのし掛かってきた男の肩を必死に押し返す。
「悪いが我慢の限界だ」
連日の張り込みで寝ていないのか、いつもはぴっちりと纏められた髪も乱れ目の下にはクマもできている。
元々の強面が更に凄みを増した鬼嶋の気迫は尋常なものじゃない。
以前の和久なら恐怖で固まっていただろう。
しかし今は違う。
「もう、しょうがない人ですね」
和久はため息を吐くと、着ていた服を脱いだ。
その下にはいつそうなってもいいようにチャイナドレスを着込んでいる。
「勤務中ですから手短にいきますよ」
自分より体格のいい鬼嶋を個室の壁に押しつけると、膝を使って男の股間をグリグリと刺激する。
既に半分ほど勃起していたそこは和久の膝の下で一気に育った。
「っく…はぁ」
鬼嶋の切羽詰まったような呻きと熱い息が首筋を擽ぐる。
あぁ、いい。
たまらなく興奮する。
鬼と呼ばれる鬼嶋が和久の足 に堕ちる瞬間が。
「俺をこうした責任、とってくださいね」
和久は不敵に笑う。
鬼嶋を追い詰める表情はすっかりフェティシストの顔だった。
end
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