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第6話

あの倒錯的な行為に充てられてから、自分の中に芽生えつつある感情に和久は戸惑っていた。 男は毎回和久の足に執着し、足での行為を要求してくる。 もしかしたら組対の隠しカメラがどこかにあってこの行為を見ているかもしれない。 あの鬼嶋が見ているかもしれない。 恥ずかしい、はしたない。 そう思っている一方で、見られているかもしれないという状況に異様に興奮している自分がいた。 今まで決してそんな嗜好はなかったはずなのに。 「紅花(ホンファ)、今日は特別接待だ」 「え?」 控え室で白いチャンパオの男が来るのを待っていた和久は眉を顰めた。 和久はあの男しか接客しないようになっているはず。 計画が変更されたのだろうか? 胸はざわついたが、和久はオーナーに案内されるまま店の地下室へとついて行った。 するとすぐにどこかの部屋に押し込められる。 中には数名の男がいて、和久が入ってくると視線が集中した。 「なかなか美人じゃないか」 一人の男が和久を値踏みするような目で見てきた。 「最近入ってきた新人だ。なかなかいいだろ」 「経験は?」 「さぁな。やって確かめりゃいい」 「それもそうだ」 訛りの強い中国語のやり取りに通訳が追いつかない。 しかし男たちの下卑た笑みと、ビデオカメラを向けられている事に気付いた和久は察した。 自分がいかがわしい目で見られている事に。 身の危険を感じた和久は引き返そうとする。 しかし、すぐに行く手を阻まれてしまった。 抵抗しようと身を捩るが数名の男に押さえ込まれて逃げ出せるわけがない。 そうこうしているうちに、男たちの手が和久の際どい衣装の隙間から潜り込んでくる。 見ず知らずの男たちに触れられる嫌悪感と、これからされるであろう事への恐怖。 咄嗟に浮かんだのはなぜか鬼嶋の顔だった。 「やめ…っ!!」 すると、突然部屋の大きな音と共に扉が蹴破られ、数名の武装した男たちが雪崩れ込んできた。 「動くな!警察だ!」 怒号が飛び交い部屋の中は一気に騒然となる。 和久を押さえつけていた男たちがまるで映画のワンシーンのように次々と吹き飛んでいくのが見えた。 その映画のような世界の中、白いチャンパオが翻るのが見えて和久は瞠目する。 どうしてこの男がここにいるのだろうか。 「櫻井くん、怪我はないか」 どうして紅花が櫻井だと知っているのだろうか。 すると男が自らの顔を鷲掴み、それをズルッと引き剥がした。 精巧なマスクの下から現れたもう一つの顔に和久は唖然となる。 それが鬼嶋(きじま)だったからだ。

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