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第6話
皇さんは僕の話を聞き終わると、皇さんは不満そうに鼻を鳴らした。
「それじゃ、私は最低な男じゃないか!」
「は、ぁ……」
僕はどう答えていいか分からず、困って皇さんを見上げた。
何故見上げているかというと、僕が、皇さんの膝の上に座らされているからなんだけど。
普通に座りたくても、皇さんは僕の体を片手でホールドしていて、離してくれない。
ちなみに今いる場所は、ホテルのスイートルーム。
最上階だ。
僕が宿泊した部屋の何倍も大きくて、何倍も豪華な部屋。
ホテルのロビーから僕はその部屋に担がれたまま連れてこられて。
このホテルは、皇グループの系列会社なのだそう。
僕は全然知らなかった。
そして僕は、恋人同士のように皇さんの膝の上に顔が見えるように斜めに座っていて。
だけど平均身長より若干小さい僕が長身な皇さんの膝に座ると、どうしても見上げてしまうのだ。
皇さんは僕の話を聞きながら、何度もキスをしてくるので僕の話は中断してなかなか進まなかった。
それに、皇さんのキスはとても気持ちが良くて、僕はキスされるたびにどこまで話したか分からなくなって。
もしかしたら何度も同じ所を話したかもしれない。
でも、皇さんはそんな僕の話を、嬉しそうに聞いてくれてたんだけど。
最後のところで、急に不機嫌になってしまった。
「私は! 初めて愛を交わした相手を置いて帰るような人間じゃないぞ?
颯太の体を綺麗にしてからシャワーを浴びて部屋に戻ると、部屋はもぬけの殻だった。
それに……それから私は二時間、部屋で待っていた。
部下からはひっきりなしに電話がかかって来るし、今考えても、最悪な二時間だった」
「えぇ!!
ごっ…ごめんなさい」
僕は皇さんの告白に、息を飲んだ。
し……知らなかった!!
ヤリ逃げしたのは、僕だったなんて!!
「仕方なく、ベットサイドに連絡先を書いて置いておいたんだが、全く連絡が来ないし、諦めきれずに朝部屋を訪ねたら、結婚指輪をつけた女性が出てきた。
正直既婚者の男性を抱いたのかと自己嫌悪で頭を殴られたみたいな気分になった」
「う……それ、と、智子ねえだと思う。
あの時ダブルしか空いてなかったから、姉さん夫婦の部屋借りてて……。
姉さん、けっこう大雑把で慌てんぼーだから……。
メモに気付いてなかったかも?
う……ご……ごめんなさい……。
僕が、ちゃんと確かめたら……良かった……」
そんな悲しい思いを、皇さんにさせちゃったなんて。
僕はなんてことをしてしまったんだろう。
だけど、皇さんは優しく僕の頭を撫でた。
「馬鹿な……! 颯太は悪くない。
名前は分かったんだ。
調べたらすぐに居所が分かったはずだ。
颯太を不安にさせた私が悪い」
どうしてこの人は、こんなに優しいんだろう。
僕は胸が熱くなって、皇さんのことが愛しくてたまらなくなって、皇さんを抱きしめた。
「皇さん……」
「……明信だ……」
「あ…明信、さん。
僕、子供を産んでも、いいですか?」
僕は恥ずかしかったけど、思い切って皇さんに聞いてみた。
皇さんはぎゅっと僕を抱きしめた。
それだけで僕は幸せだったんだけど。
「結婚しよう。
颯太……。
愛してる」
皇さんは僕にちゅっ、て、キスをして、「返事は? 颯太」と聞いた。
「僕も……あいして、ます。
すっ、え長く、よろしく、おねがい、します」
僕は涙で顔がぐちょぐちょになっていた。
だけど、後から聞いたらその時の僕が、最高に可愛いかったと皇さんは言う。
僕のつわりが収まるのを待って、僕と皇さんは結婚式を挙げた。
式場は、もちろん箱根エンパイヤホテルで。
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