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第84話 先へ
飛鳥井玲香の部屋のソファーには全員は座れなかった…
気にする事なく康太はソファーに座ると足を組み、母を見上げた
「母ちゃん、今回のリフォームを飛鳥井源右衛門を通さなかったのは何故だ?」
玲香はリフォームだから…と、呟いた
「母ちゃん、オレは飛鳥井稀少の真贋
オレが邪魔なら潰そうと言う奴は後を立たねぇんだよ
そんな中、飛鳥井はリフォームで源右衛門が張った結界を破いた
オレは転生の義を唱える儀式で、弱ってしまった…
恰好のチャンスだったからな狙われた
オレは死にたくて仕方がなかった状態に陥り
仲間は…疑心暗鬼に陥りバラバラになった…
このままじゃ誰か解らぬ者の思う壷だ…
オレはじぃちゃんにだけ告げて家を出た
誰にも邪魔されたくなかったかんな
今の自分を乗り越えねぇと…
先には進めねぇ…
だからオレは消えたんだよ」
まさか…安易に始めたリフォームが源右衛門の結界を壊して…
康太の命をも危ぶませるものになろうとは…
想像を絶していた
「お主は…何処へ行っておったのじゃ?」
「オレは飛鳥井の菩提寺から裏に回り
断崖絶壁の山を登り
獣道を只管走って山の上へと向かった
陰陽師 紫雲龍騎に逢いに行き、修行を行った
伊織は2年早いが伴侶の義を行い
オレは三通夜の儀式を行った
オレは百年前の巻物を吸い込み…マスターした」
玲香と瑛太は言葉がなかった…
「じぃちゃんが2日で三通夜の儀を終わらせた者はいない…って言ってた
伊織も2日で伴侶の義を終えた
もうオレは負けねぇ!」
康太と榊原の雰囲気が変わったのは、その所為か… と、瑛太と玲香は納得する
「飛鳥井の家は、紫雲龍騎自ら出向き結界を張った
一応の応急措置はした……。
この会社の地下の駐車場には、オレが結界を張った
屋上は遺しておいたから、伊織、やるか?」
康太は榊原に問い掛けた
「解りました、飛鳥井の家で行った術式で良いのですよね?康太…」
「あぁ、あれで十分魔は祓える
ならば、屋上に出て一緒にやるか?
オレが闇を祓う
お前は魔を祓え
オレの部屋でやったアレは魔を祓うもの
出来るな?」
榊原は、頷いた
「皆、屋上に出て見届けても良いが円陣の中へは近付くなよ!
オレの焔は再生が不可能な程に人を傷付けるかんな!」
見届ける上での注意事項を聞き、皆で屋上へと向かう
屋上に出ると康太は、鞄から刀を出した
真っ赤な短剣を康太は握っていた
榊原も鞄から刀を取り出しすと、蒼い綺麗な色をした刀を握っていた
康太と榊原は、相対的な位置に立った
康太は鞘を抜いた…
すると康太の身長より長い刃が、紅蓮の炎を上げ光った
榊原も鞘を抜いた
すると榊原の身長に似合う長い刃が、蒼い妖炎を放っていた
康太は地面に刃を着け走った
紅蓮の炎を上げて…地面が燃える
榊原は空に掲げて康太と反対側に走った
蒼い焔が頭上高く燃え上がった
康太は夕闇を切り裂き…闇を祓った
榊原は天空を切り裂き…魔を祓った
そして、康太と榊原は、微笑み合い結界を張った
総てを終えると刀を鞘へ戻した
長い剣は鞘に吸い込まれ…短剣に収まった
短剣を鞄に仕舞うと
「さてと、帰るかんな!
やっとこさ、死にそうな新婚旅行から帰って来たから、美味しいの沢山食わねぇとやってられるかっての!」
康太が言うと、玲香はならば外に食いに行くか?と、聞いた
「おっ!早く食いてぇ!」」
と康太が騒ぐと、地下の駐車場で待っておれ…と、言われ走って行った
玲香は、瑛太に、紫雲龍騎の所が何処におるか知っておるか?と問い掛けた
瑛太は…知らなかった…
「お主は飛鳥井の総代になった
近いうちに御挨拶にぬかねばな
総てを受け止められよ!飛鳥井瑛太
多分…紫雲龍騎の顔は拝めぬが、意図は総て承知され言葉をさずけられるであろうて!」
と、玲香は瑛太に告げた
「母さんは御逢いした事が有るのですか?」
「結婚の祝儀でな祝辞を貰い受けた
だが顔は知らぬ
紫雲龍騎も中々姿を見せぬ…御方だからな
飛鳥井の菩提寺から裏に回り断崖絶壁の岩を登る
そして人をも通さぬ獣道を通り、そしてまた絶壁登る…
腕の力だけで登り…気が緩んだら…
その先は死が待っておる…そんな場所だ。
そこへ行けたとしても、紫雲龍騎は人を見て御簾が開くのは希れ…
そんな彼に康太は幾度も後継者にならぬか?と、言われている…。
オレは飛鳥井康太だから!
と断っていると転生の儀の後、住職に聞いた…。
姫巫女も然り。
姿を滅多と見せない巫女が康太の手を治した…
凄い事なんだがな…そんな酷使を私達はしていると思うと…辛くて叶わん」
瑛太は…康太の置かれた総てが…過酷で…厳しい…と、想いながらも見守るしか出来なかった
「母さん‥‥」
「それでもな、我等は逝かねばならぬのだ‥‥」
「承知しております!」
玲香は頷いた
瑛太は「腹減りの康太が待っております!逝きますよ!」
と母を促し康太の元へと向かった
明日の飛鳥井へ続ける為に‥‥
覚悟を決めて一歩一歩踏み出す
康太‥‥我はお前の防波堤になろう
その想いは今も昔も変わりません
兄の想いは昔も今も過酷な世界に生きる弟の為だけに在った
母の想いも‥‥
飛鳥井の為、家の為
飛鳥井に生きる覚悟と‥‥我が子を愛して止まなかった
明日の飛鳥井へ繋ぐ為に一歩
また一歩
踏み出さねばならないのだ
その歩みは誰にも止めてはならなかった
先へ繋ぐ為に‥‥
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