83 / 84
第83話 日常へ
ホテルのカーテンの隙間から差し込む眩しいまでの光に目が醒めると、康太は携帯を取り出し瑛太の携帯に電話電話を入れた
「もしもし、瑛兄?
オレの名前は絶対に呼ぶな…」
「あぁ私だ。どうした?」
「ホテルニューグランドまで来い
レストランで食事してる。」
康太はそう言うと電話を切った
「伊織、体が怠い…」
「僕も…怠いです…」
二人は顔を見合わせて笑った
康太は榊原に手を伸ばし抱き着いた
「凄かったもんな」
「触れてない時間が火をつけました…」
「伊織…愛してるかんな」
「康太、僕も愛してます」
二人は深い接吻をして額を合わせ見つめ合った
「支度しますよ
瑛太さんが来ます」
「うん。そしたら家に帰ろ
もうオレは大丈夫だ
何かあっても…オレは不安にはならねぇ
伴侶の儀をクリアしたお前は、何処へ出しても恥ずかしくねぇオレの伴侶だ 」
「僕の康太…」
「オレはお前のモノだ
お前はオレのモノだ
もう離れる気すらねぇぞ!」
康太は笑い榊原に絡み付いた
チェックアウトして部屋の支払いをしようとしたら、代金はもう支払ってあります…の事だった
「まだ見えてんじゃん!じぃちゃん!」
康太は怒りながら、レストランで朝食を取り瑛太を待った
瑛太は物凄い勢いでホテル・ニューグランドまでやって来て、レストランに走ってきた
康太はその姿をキツい瞳で見ていた
「瑛兄、着けられてねぇだろうな?」
康太は笑って骨折した筈の右手をふった
「康太…何処へ行ってたんですか?」
「それは言えねぇ
多分聞いても瑛兄では解らねぇ話になる」
目の前の康太は……元気で…溌剌としていた
怪我した手も…包帯すらしていなかった
「飛鳥井真贋を狙う奴がいたから、隠れた」
康太は世間話をするかの様に簡単に…
狙われてる話をした
「瑛兄もオレを追い詰めて…弱らせた
あれは操られてるからだって…気付いてた?」
瑛太は首をふった
「オレが骨折した時…死にたくて仕方がなかった…
そもそも、伊織がいねぇだけで死んでたら、命が幾つあっても足んねぇって!」
康太は豪快にガハハッ吐笑った
瑛太は…そう言えば…と、話し出した
「私も……マイナス思考になって…康太を追い詰めました…
自制が効かなくなっていたんです…
自分で自分がコントロール出来ずにいたのです‥‥」
瑛太は呟いた
「瑛兄、考えても見ろよ
一生達にしても…同じ家にいんのに…
何でバラバラなんだよ…
今まで行き先も告げず一生が消えた事は一度だけ
しかもそれなりの理由がある…
なのに今回は何故だ?
腑に落ちない事ばかりだ…
オレが動くと必ずしも邪魔が入って…
気持ち悪い想いを…何度もした
しかも…今回、オレが弱っていた時に合わせて来た…おかしいだろ?瑛兄」
言われてみれば最近…おかしい事ばかりある
「飛鳥井真贋は狙われてる…
結論はそれだ…」
瑛太に唖然となった
「だが、オレは負けねぇ!」
康太は不敵に笑い…ふん…と鼻を鳴らした
「と、まぁそう言う事でオレは消えた」
「骨折は?」
「治してもらった!
もう元通りだ。
そしてオレも元通りだ…」
瑛太は胸を撫で下ろした
「康太…」
瑛太は康太の頬に手を当てた
康太の温もりが瑛太に伝わってくる
「オレは家に帰る
瑛兄はまだ仕事があんだろ?
瑛兄を呼んだのは、朝食を瑛兄に奢らせる為だ!」
康太がお茶目に舌を出して笑うと
「幾らでも兄に奢らせれば良い‥‥
兄を呼んでくれて‥‥ありがとう康太‥‥」
「オレの兄は飛鳥井瑛太!
オレはこの命が尽きるまで瑛兄の弟だ!」
瑛太は嬉しそうに笑い
「これからどうされるのですか?」と問い掛けた
「飛鳥井に還ってじぃちゃんと話をしねぇとな」
「ならば飛鳥井まで送って逝きましょう!」
瑛太は乗せて行くと、引かなかった
康太は瑛太に携帯を貸してくれ…と、言うと
瑛太は携帯を康太に渡した
康太は予め作っておいた式神を瑛太の携帯の中へ入り込ませた
これで何かあったら…助けに行けるし…
何処で操られたか…良く解る…筈だから…
「一生…でねぇな‥‥
ありがとう瑛兄」
康太は瑛太に携帯を返した
「さぁ行くもんよー」
康太が言うと瑛太は立ち上がり精算をしに行った
そして瑛太の車で…康太と榊原は飛鳥井の家へ帰って行った
飛鳥井の家に帰ると、誰もいなかった
康太は榊原と家の中へ入って行った
瑛太は康太と榊原を下ろすと、会社に戻って行った
康太は部屋へと入ると
「伊織の剣はどんなんだよ?」
榊原に手を出し剣を要求すると
バックの中から剣を取り出し康太へ渡した
「それが伊織の剣か…蒼くて格好いいな」
榊原の剣は蒼い鞘に入った
榊原は康太の剣を手にしていた
「君の剣も君らしくて‥‥素晴らしいです」
康太の剣は紅い鞘に入っていた
康太は榊原に剣を返すと
「これは持ち歩け
オレも持ち歩くかんな!」と念を押した
榊原は、剣を鞘から抜き…風を斬って払った
「伴侶の本を貰いました
その中に…今のが書いてありました…出来てましたか?」
「上出来だ!オレも書物庫で、式神の作り方を読んだ
作れる様にもなったし
少しレベルアップしたな」
康太は剣を鞄の中へ入れた
榊原も同じ様に、剣を鞄の中へ忍ばせた
そして携帯を取ると…恐ろしい事態になっていた
着信…パンクって…
「あ! 伊織……新学期始まってんぞ!
今日は9月の2日だ…
昨日1日は始業式だったじゃん…」
そりゃあ鳴るわな…桜林祭もあるし…
「伊織…夏休み…終わってるやん…」
榊原はたらーんとなった
式の日に…康太とセックス三昧で忘れてしまってましたなんて…言えない…
道理で家に誰もいねぇ筈だわ…と、康太は納得していた
「伊織、どうする?学校に行く?」
康太が気にして聞く
「今日までは…イチャイチャしてましょう」
もう…後少しで…授業も終わるだろうしな…
康太はベットの上に腰かける榊原の膝の上に乗り、首に腕を回した
「ならお言葉に甘えるかんな」
榊原の頬に擦り擦りして甘える
榊原は康太の好きなさせておいた
「伊織、今日は半日で授業は終わるかんな
も少ししたら学校に行くもんー」
「……僕は3年になって、余り仕事しない執行部の部長になってしまいました…」
「これから汚名挽回
動け伊織!もう邪魔も入らぬわ」
「康太といる時間が減りますね…」
「オレは何時もお前と一緒
儀式の間でオレの存在を感じなかったか?
オレは感じたぜ
僕の康太…僕の康太って言う、お前の想いが…オレを動かせた
何処へいてもオレ等は1つ
それが伴侶の義だ
もう離れたり…離婚は出来ぬのだ…」
「僕は君から離れる気は更々ないですから、構いません 」
榊原は、康太の口に軽くキスをした
「さてと、行くもんよー」
康太は榊原から離れて立ち上がった
そして榊原に腕を差し出した
「お供します。君と何処までも」
榊原は笑って康太の手を取った
そして互いの携帯の着信履歴をリセットして
康太はタブレットを取り出し鞄の中へしまい、部屋を出た
部屋を出ると源右衛門が現れ、康太の姿を見て笑っていた
康太は源右衛門の近くへ寄った
「じぃちゃん、見えてんじゃん!」
康太に言われ源右衛門は笑った
「少しはな…
前のような力はない
まだ産まれてはおらんからな…
まぁ修行を終えたお前等の気持ちなんか見えてなくても解るわ!
しかもお前等は、ラブホとかはに行かぬだろ?
ならばホテル・ニューグランドに来るのは見えんでも解る
わしも…あの修行をしたんだからの…
互いを求めて確かめ合いたいと思うのは…伴侶ならば当然じゃ」
康太は源右衛門を視て
「オレの存在が邪魔な奴って…誰だ?」
単刀直入に問い掛けた
源右衛門は「お前は稀少の真贋…
利益に反した人間は消したいと思うのは…
当然の事だろうて…」と答えた
「会社関係?」
「違う!
お前が今手を出している濱田の側近辺りか…
戸浪と、懇意にしていた…会社とか…?
上手く戸浪を手に入れようとしたのに…
守った飛鳥井康太は…敵じゃろ」
「弱ってた時に弱らせる事を重ねて…オレを潰す気だったのは明白
オレは反撃に出る!」
「今のお前なら無敵じゃろう
あの修行を2日間で終わらせるとは…流石じゃ…。
過去最高に…早い…
そんな事の出来る人間は非情な人間の心を忘れた人間か…相当の家族や友人、伴侶との絆が深くなければ無理だ…と住職が言ってたわい」
「飛鳥井の家族も、オレの友人も、
………そして伊織も…オレが刃を向けたなら…それを黙って受け入れる…
あんな幻影などには惑わされはしない
そうだろ?じぃちゃん…」
「解っていても…心がそれを認めるのには…凄い勇気と決断力が要るのじゃ…」
「オレの側にいる人間は…決してオレの逝く道を邪魔したりしねぇ!
オレを守るための壁にはなるが…オレの行く道を阻みはしねぇ!…だから斬れた!」
源右衛門は、そうか…と呟き…榊原に向き直り、頭を下げた
「まだ2年猶予有ったのに…伴侶の義を、良くぞ受けてくれた
お礼を申しますぞ!
しかも康太とシンクロして最後は康太を斬った…と。
姫巫女が、お前等の絆は歴代一強い…と言っておった
儀式の最中にシンクロするのは…危ない…
なのに康太は…伴侶に意識を飛ばし…守った
語り継がれるぞ。お前等、伴侶は。」
「んなもんには興味はねぇ!捨ててくさ」
「この家の闇は祓った。
紫雲自ら式紙を飛ばし祓って行ったわ。」
「そうか、ならば、家は安心だな
オレは学校に行って来るもんよー」
源右衛門は、ならば行け…と康太の肩を叩いて
部屋へと戻って行った
そして康太は…思い付く
「じぃちゃん!
うちって今リフォームの真っ最中なんだよな!
そうか……。それでか。」
「そう言う事じゃ」
足を止める事なく返事をし、部屋へと戻って行った
康太は榊原を、見て
「この家には飛鳥井源右衛門の結界が張ってあんだよ。
だけど、リフォームでそれが壊れた。
無防備な家に、無防備な真贋…
潰すには最適な状態だったと言う事だ 」
康太の説明で、榊原は納得した
「じゃ康太、学校に行きましょうか 」
「帰り、食堂に寄って良いか?」
「良いですよ。」
榊原の優しい瞳が康太を包む
康太は楽しそうに笑い、歩を進めた
康太と榊原は、学校へと向かった
学校に行くと…康太と榊原の姿を目にした生徒が騒然となった
二人はそんな事はお構いなしで、歩く
生徒会室のドアをノックすると、兵藤は驚いた瞳で康太を見た
行方が解らないと…居所を聞いた緑川一生は憔悴しきって言った
何も告げず消える事などなかった
信じられないと…頭を抱え…泣いていた
「よっ貴史!遅くなったな!」
言葉を発した康太の姿は…内から光を放つ程に溌剌としていた
「お前…何処へ行っていたんだよ!」
兵藤は立ち上がり康太の胸ぐらを掴んだ
そして……抱き締めて…泣いた…
「すまん…貴史…心配をかけた…」
康太が言うと兵藤は
「アイツ等の所へ顔を出せ!
アイツ等は倒れそうな程お前を探してる!」
「解ってんよ貴史。これから行く
本格的に動くの明日から
オレは絶対に失敗はしねぇ
お前を担ぎ出した御輿を最後まで下ろす気はねぇからよ」
「当たり前だバカッ!」
「なら今日はこれで帰る。良いな?」
「あぁ。早く行きやがれ!」
兵藤は康太を離し背を向けた
榊原はそんな兵藤に一礼して、生徒会室を後にした
生徒会室を出ると康太は歩きながらスマホを取りだし電話をかけた
電話に出るなり「今何処よ」と、聞く康太に、耳が痛くなる程、一生は怒鳴った
「一生、何処だ!答えろ!」
康太が聞くと、一生は学校の空き部屋に居ると堪えた
「ならば行く。待ってろ」
康太は電話を切ると、居場所か解ってるかのような確かな足取りで歩き出した
そして今は使っていない空き教室のドアを開けると、入って行った
教室の中へ入って来た康太の姿を見付けると、一生は飛び出し康太を抱き締めた
四宮も一条も康太に抱き締め泣いた…
「すまなかった…」
康太は謝った…心から心配をかけて…謝った
「行き先位言いやがれ! 」
一生が泣きながら言う
「僕らが要らなくなりましたか?」
四宮が泣き叫ぶ
「こーたを無くしたら…生きてけねぇじゃねぇかオレ様は!」
一条が康太を揺さぶり泣き叫ぶ
康太はかけがえのない友を腕に抱き締め
「ただいま。心配かけたな! 」
と、声をかけた
一生は康太から離れて榊原を抱き締め
「お前も…心配させんじゃねぇよ!」
と、怒鳴った
榊原は何も言わず、一生を抱き締めた
康太は四宮と一条の肩を抱き、教室のドアを閉めると、中へ入り適当な椅子に座った
四宮は康太の怪我していた筈の手を見て驚いた
そこには…骨折の跡も無かったから…
康太は足を組むと、一生に
「まぁ座れ。話がある」
と、促した。
「一生は、4日前の昼、何処にいた?」
康太は単刀直入に聞いた
「オレは力哉と出るって総一郎に言ったぜ?」
「総一郎は知らないと答えた 」
康太が言うと、四宮は僕は聞いてなかったですよ…と答えた
「力哉が、怯えていたんだ
僕は此のままでは…康太を手にかけてしまう…と。だから…連れ出した」
康太は、そう言う事か…と、一人で納得していた
そして一条に向き直り
「お前は何処にいた?
仕事じゃねぇだろ?」
と、聞いた
「神野が…オレ様が殺される夢を見て…気になって連れ出した
でも言えなくて仕事と言った…
何かがおかしいんだ…最近…康太は怪我するし…オレ様達はバラバラだ…何故なんだ?
一緒にいたいから康太の側にいたのに…
側にいても遠いなら…いない方がましだ!
オレ様はこーたしかいないのに…」
康太は一条を抱き締めた
「最近…オレ等の回りはおかしい事ばかり…
一緒にいたいから飛鳥井の家にいるんじゃねぇのかよ…なのにバラバラだ。
しかもオレは身も心も弱って………
死にたくて仕方がなかった…
床を殴らなかったら…死んでいた…
付け入られたんだよオレ等は…」
一生達は、頷いた
一生は康太に…「所で指は?」と問い掛けた
康太は皆に折れた方の指を開いて見せた
「折れてましたよね?」
四宮が聞く
「あぁ肉を突き破る程ボキッとな 」
全員がなら何故!と、聞く
「オレが本当に新婚旅行に行ったと思った? 」
全員が首をふる
「オレは、飛鳥井の菩提寺から断崖絶壁の山を登り
陰陽師 紫雲龍騎の所へ向かった
あの手では山は登れぬ…だから姫巫女に治癒してもらった
そしてオレは山へ
伊織は伴侶の儀式で開かずの間へ
三通夜の儀式を行った
その儀式は…友人や家族…そして伴侶を斬って進まねば出られない…
心の修練の儀式を3日行い
後の一日は互いを確かめる作業に没頭して、今朝帰って来たんだ。」
康太は不敵に笑っていたが…
想像するだけでも…厳しい修行をして帰って来たのを伺えれた
一生は「もう…大丈夫なのか?」と尋ねた
康太は「大丈夫に見えねぇか?」と笑った
その笑顔は、元気でやんちゃな飛鳥井康太だった
康太は、さてと、と姿勢を正すと
「一生、現総理の周辺側近
そして戸浪の会社の遺恨を残した人間…とか探れ」
康太が指示すると一生は、了解と答えた
「総一郎、情報を駆使して、飛鳥井康太の情報を探れ
真贋がなくなった…みたいな噂を流せ」
四宮は嬉しそうに、お手の物です…と微笑んだ
「隼人、お前は神野にこれを渡せ!」
康太は一条に康太自ら書いた札を手渡した
「肌身離さず持ってろ!って言っとけ 」
一条に笑いかけると、一条はやはり康太に抱き着いて泣いた…
康太は一条を撫でながら
「オレはもう、何者にも負けねぇ!」と笑った
一生と四宮は胸を撫で下ろした
「所で力哉はどうしてる?」
康太が聞くと一生は、仕事に出てねぇのか?と、聞いた
「家に帰ったら誰もいねぇかんな焦った…
力哉はいなかった…取り込まれてねぇよな?」
康太が言うと一生は、それはねぇ…と答えた
「力哉は怯えていたんだ…
それで家から離した。
言っとくけど食ってねぇからな!」
と、念を押すのを忘れない
康太はスマホを取り出すと、力哉に電話を入れた
ワンコールで電話に出た力哉は泣いていた
『康太…何処にいるんですか?
君がいなくなるから…僕は仕事も手に着きません…』
泣きながら言葉にしている
康太は学校にいるから来い!と告げた
『学校ですか?』
問い質す力哉に康太は、そうだ学校にオレはいる!と告げた
力哉に食堂に来るように告げ、康太は場所を食堂に移す事にした
「腹減ったかんな、食堂に逝くとするか!」
康太が言うと、皆は立ち上がった
食堂に行き鯵フライ定食、沢庵多目を食べてると、力哉は駆け込んで来た
一生は力哉の珈琲を買いに行き、テーブルの上に置いた
「康太…何処に行ってたんですか?」
力哉は康太に話し掛けた
康太は力哉を射抜き
「お前は、あの時何故何も話さなかったんだ?」と、問い掛けた
「僕は話しましたよ、康太が突然切ったんでしょ!」
力哉は必死に状況を話した
一緒にいた一生も
「力哉はお前にちゃんと話していた。
電話を切ったのはお前だろ?」と聞いた
「オレは何も聞こえなかったから、切っただけだ?」
何者かの…意図を感じる…
疑心暗鬼に陥らせ…バラバラにして…中から崩す…
「力哉、お前が怯えた理由を聞かせろ」
「僕は…何日にも渡って…康太を手にかける夢を見ていました…。
そしてその日…本当に手にかけたような…感触が手に残ってて…
耳元で飛鳥井康太を、殺らねば…ずっと見るぞ…
と、聞こえてきて…一生に相談しました
そしたら一生も不穏な空気は察知していて…
外に出よう…と、言ってくれたんです
それで僕らはファミレスで数時間過ごし帰ったら康太が行方不明でした…」
これで全員の全容が見えた
姑息な…妖術にやられた…
そして…命を落とす所だった…
それ以上の話を、この食堂でするのは危険と判断した康太は「帰ろうか…」と告げた
榊原は康太のトレーを返しに向かった
そして食堂を出て駐車場に向かう
風を切って颯爽と歩く康太の足取りは軽い
康太は力哉の車に乗る前に、トランクを開けさせ、何やら唱え何処から出したのかお札を貼った
「運転中に襲われたら堪らねぇし」
と、笑っていたが…狙われたら一網打尽になる…
康太は車に乗ると、飛鳥井建設に行けと告げた
そしてスマホを取り出すと電話をかけた
「あっ母ちゃん?話がある
帰るのはオレが行ってからにしろ!」と告げ電話を切った
飛鳥井玲香は『承知した!ならばお主を待つとしょうぞ!』と了承してくれた
「さぁ力哉行くもんよー」
康太は言うと、榊原の膝に乗り甘えていた
榊原は康太を、膝の上に抱き幸せそうに笑っていた
飛鳥井建設の地下駐車場に車を停めると、康太と榊原はいち早く車から下りた
「さてと、やっとくか?
四方魔除けを描いとかねぇとな!」
康太が口に出すと、榊原は力哉や一生達に
「まだ車から降りないようにして下さい」と告げた
そして康太の鞄から康太の剣を取ると渡した
康太は剣を手にすると、紅蓮の妖炎が上がった
鞘を抜くと…康太の手には長い剣が握られていた
康太は剣の先を地面に着け走りながら印を斬った
康太の通った場所が紅蓮に燃える
輪を描き五芒を結ぶ。
四方八方焔は渦を巻いて燃え上がっていた
康太を取り囲む様にして円陣は燃え上がり
康太は『 覇っ!』と闇を斬り着けた
すると紅蓮の炎は鎮まり消えた
康太は自分の身長位ある剣を鞘に榊原に渡した
榊原は剣を鞄に戻した。
「もう良いぞ。出て来いよ!」
一生は、今のは何なんだよ…と康太に聞いた
「結界を張った
オレの生きてるうちは効くと想う
話が筒抜けは、勘弁だかんな!
だから張っといた 」
一生はすげぇな…と感心した
「この技の修得の修行に出た
邪魔が入らねぇように黙って行ったんだ…許せ…」
一生は康太を、軽く殴った
「次はちゃんと言ってけ!」…と文句を言った
地下の駐車場からエレベーターに乗り最上階に向かう
そして飛鳥井瑛太のドアをノックした
ドアを開けると康太が立っていて……
瑛太は信じられない想いで一杯になった
康太は笑い、来いよ瑛兄!と
瑛太も連れて、飛鳥井玲香の部屋のドアをノックした
ドアを開いた玲香は、康太の姿を目にして驚いていた
「部屋に入れろ、飛鳥井玲香! 」
康太が言うと玲香は皆を招き入れた
ともだちにシェアしよう!