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第52話 行為のあとの幸せな時間

 二人は一つに繋がったまま、抱きしめあっていた。  冬多がウトウトとまどろみだしている。  このままの体勢だと辛いだろうと思い、進一郎は名残り惜しいが体を離した。  冬多の体をきれいに拭ってやろうと思い、ベッドから出ようとすると、 「佐藤、くん……? どこ、行くの?」  冬多がすがるような声で聞いてきた。 「どこにも行かないよ。ほら、体、そのままだと……なんだろ? タオルで拭いてやろうと思って……」 「……あ……」  冬多は真っ赤になってうつむいてしまった。  冬多の体は、彼自身の愛液が飛び散っているのだ。 「タオル持って、すぐ戻ってくるから……」 「やだ……、佐藤くん……」  冬多が置いてきぼりにされる仔猫のような顔で駄々をこねた。  そんな彼がかわいくて、 「じゃ。一緒にシャワー浴びようか?」  そう提案してみた。 「えっ……?」  冬多はまた、一瞬でトマトみたいに真っ赤になってしまう。  体を繋いでも、冬多の純情で、恥ずかしがり屋なところは変わらないようだ。  進一郎は冬多の額にチュッとキスをすると、シーツにくるんだまま彼をお姫様抱きにした。 「さ、佐藤くん……、じ、自分で、あ、歩けるから……」 「ほら、暴れない、冬多。落っことしたらどうするんだよ」  それでも小さく抵抗してくる冬多を宥めているとき、それが、進一郎の目についた。  彼の右腕の付け根の裏側、柔らかなところに、直径二センチくらいの円形の傷跡のようなものがあった。  行為の最中は、夢中だったから気が付かなかったけれど、皮膚がひきつれたみたいになっていて、切り傷や擦り傷の跡と言うよりは……。 「冬多、これ、火傷のあと?」 「え? ……ああ……」  進一郎の視線を追って、冬多も自分の腕にある、それに目を向ける。 「うん、多分……。でも、ずいぶん昔からあったし、僕自身はまったく覚えていないんだけど……」 「そう……」  なめらかな肌にポツンと残った火傷の跡。  それは真っ白な新雪につけられた一つの靴跡のようにくっきりとしていて、痛々しさを覚えさせるものだった。  

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