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第1話

桜散る四月の春、全寮制男子校立春高校の新入生は門を潜ると同時にある一人の生徒に釘付けになっていた。 日の光でキラキラ輝くウェーブがかった蜂蜜色の髪に陶器のように滑らかな象牙色の肌。 大きくクリクリした二重の瞳は髪と同じ蜂蜜色をしていて、長い睫毛はくるんとカールされていた。 可愛いとあちこちから賛美の声をかけられるが、当の本人はその言葉を当たり前のように受け止めて、黙々と前を向いて歩く。 彼の名前は白木 綾人(しらき あやと)。 持って生まれた優れた容姿は天使と比喩されるほど愛くるしくて美しい。 おっとりした雰囲気はか弱く、おしとやかでどこか奥ゆかしい印象を相手に感じさせた。 「君を守る壁になるよ!」 「ナイトに立候したい!」 「俺の姫になってくれ!」 バカ丸出しの口説き文句を突如叫びながら、自分の周りを囲いだした輩に綾人は足を止めた。 真新しい制服姿の三人組の男はどうやら自分と同じ新入生のようだ。 目をハートマークに変えて、自分へ触れてこようと手を伸ばす男達に嫌悪感を示すよう、眉を顰め、舌打ちすると三人の男はピシッと音を立てて固まった。 気持ち悪っ・・・ 心の中で罵倒すると、瞳を閉じて深く呼吸し、気持ちを整える。 一拍おいたのち、蜂蜜色の瞳をゆっくり開くと、幼い頃から天使と称されたこの容姿に見合う愛らしい笑顔を三人へ向けた。 その笑顔一つで気まずそうに硬直していた三人は瞬時に顔を赤く染め、綾人に魅入られた。

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