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第2話

一年A組。 掲示板にて確認した一年間通う自分のクラスだ。 教室へ入るなり、綾人の容姿を見たクラスメイト達は歓喜の声を叫んで周りに集ってきた。 席へ着席するや男の群れに囲まれると、下心満載のねっとりとした眼差しに包まれる。 そんな気持ちの悪い視線へ嫌悪感と不快感を表に出さず、笑顔を絶やさないのは不必要に敵を作りたくないから。 この恵まれた容姿は自分でも嫌という程、理解していた。 物心ついた時から、あだ名は「天使」だった。 人から羨ましいがられることもあれば妬まれることもあった。 歳を重ねれば羨ましい気持ちは熱情へ妬ましい気持ちは嗜虐心へと人々は変えていき、綾人を悩ませた。 今日から3年間、新生活が始まるのだ。 敵より味方が多いに越したことはない。 それを踏まえて、綾人は人が好む、人懐っこい笑顔を作ると、鈴が鳴る軽やかな声で自己紹介をした。 「白木 綾人です。仲良くしてね」 ✳︎ 「キモい、キモい、キモーーーイっ!!!」 綾人は今、綺麗な色とりどりの花が咲き誇り、木や葉が茂る緑の豊か園庭に避難していた。 あの笑顔の自己紹介をすることによって、クラスメイト達からの地獄のスキンシップに陥っていた綾人は校内放送にて新入生、在校生共に入学式を行う為ホールへ移動するようにと指示が出たのを機に逃げるように教室を飛び出した。 一人になりたい思いから、式をサボるのを前提に無我夢中で駆け抜けたとき、この人気のない美しい場所へと着いた。 「綺麗だな〜・・・」 うっとりするほどの美しい花に綾人は溜息を漏らす。 朝からずっと人の目に晒されていた緊張感と嫌悪感を忘れるひと時に心が癒された。 時期、入学式が始まるであろう。 本当ならば出席するべきなのだろうが、また人の群れに帰ることが嫌でたまらなかった。 自分に変態をなぎ払う力があれば別なのだろうが、小柄で華奢な自分ではどうしようもないのが現実だ。 どれだけ悪態ついても毅然に振舞っても昔から何故かこうした輩に付き纏われてきた。 嫌な顔をして、悪態吐けば相手は自分への好意を悪意へ変えて向けてきた。 それは時として巨大な力となり、自分の身を滅ぼしかねない。 そして、身につけたのがこの鉄壁の笑顔という武器だった。

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