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第3話
「そういえば、あの子・・・。綺麗な子だったな」
乱雑に置かれていた椅子に座って植物を眺めながら綾人は同じクラスで自分の前の席に座っていた人物を思い出した。
明らかに異色を放つ魅惑的な男だった。
「西條 ざくろ(さいじょう ざくろ)って言ったっけ?」
自己紹介をしたとき、唯一自分に群がることをしなかった男に綾人は興味を惹かれた。
自分とは種類こそ違えど、かなりのレベルの高い容姿を持つざくろはとてもクールな男だった。
話しかければ笑顔で対応してくれて、感じはいい。
自分に言い寄っては集っていた者もざくろの姿に魅入られていた者が数人いた。
それなのに、彼と自分で絶対的に違ったことは・・・
あの子、あんなに綺麗なのにどうして囲まれたり触られたりしないのかな?
人を惹きつけては魅了する己と同じ容姿の持ち主なのに、ざくろの周りには誰一人寄り付くことなく静かな沈黙が守られていた。
願わくば、自分もそのようになりたい。
騒ぎ立てては、ベタベタ体に触れてきて、下心丸出しの輩にうんざりする。
「仲良くしたいな・・・」
青い空を見上げながらざくろを思ってポツリと呟いたとき、砂利を潰すような音を立てた複数の足音に綾人は振り返った。
「あれれ〜?超可愛い子がいるんだけど〜!!!」
驚いた顔は綾人を見るなり楽しそうな笑い声を発した。
「本当だ!めっちゃ、可愛い!!」
「っつーか、この子もしかして新入生の天使じゃね?朝スゲェ騒がれてたじゃん」
招かれざる客は三人。
男達は下卑た笑みを浮かべて綾人との距離を縮めてきた。
不穏な空気に綾人は椅子から立ち上がるとそそくさとその場を去ろうと試みる。
だが、もちろん、それを許されるはずもなく一人の男に細い二の腕を掴まれて引き止められた。
「はいはーい!逃げない。逃げない。何?入学式サボちゃったわけ?」
「入学早々ダメじゃん?」
「これは、躾が必要かな〜」
自分達だってサボりの癖にそれを棚に上げ、ニタニタ笑って自分を取り囲む男達を睨みつけた。
「・・・今から式に出ます。失礼します」
雰囲気からして新入生ではないのは見て取れた。おざなりにも敬語を使って腕を払った時、行くてを阻まれる。
「待て待て。式はいいから、俺らと気持ちいいことしよ〜ぜ。天使ちゃん」
一人の男はそう言うと、ポケットから小さなボトルと幾つも連なったコンドームをベラリと綾人の目の前に垂らし、二ヒヒと下卑た笑いを見せた。
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