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第106話
「つーか、なんでいきなり収集かけらなきゃなんないわけ?会長、俺だよね?」
次の日の土曜、雷雨の中、門倉は生徒会役員に呼び出され、会長椅子に座らされると膨大な量の資料と書類をデスクの上へ積み上げられた。
隣で自分と同じようにほぼ連行する状態で連れて来られた副会長の九流も心底嫌そうに顔を歪めては同じ刑に処せられている。
「門倉会長、九流副会長!最近、たるんでませんか!?夕涼み会まで一ヶ月切ってるんですよ!?本腰入れてください!!」
目に充血を作り、必死の形相で今のスピードでは夕涼み会に間に合わないと叫ぶ役員に門倉と九流は押し黙った。
理由は一つ。
最近、二人揃って人生初の初恋を体験し、想い人に無我夢中だったのだ。
そのせいで、やらねばならない業務を怠り、進行を阻んでいた。
ただでさえでも過密スケジュールの生徒会。
これ以上、拗らせると厄介なのは重々承知なのだが、朝から雷が怖いと泣く綾人を渋々残して寮を出てきた門倉はもう頭の中は天使でいっぱいだった。
「昼には帰りたいんだけど」
ボソッと呟く門倉にドンっと厚さ10センチはあるであろう書類がデスクに叩きつけられた。
「門倉会長・・・、この書類の案件が済むまで今日は帰れないと思ってくださいね」
いつもは気弱で大人しい会計委員長は余程切羽詰まっているのだろう。
本来のキャラを覆してまで食い付いてくるその姿に門倉は諦めの溜息を吐くと、山積みの書類へと目を通し始めた。
「つ、疲れた・・・」
椅子の背凭れに思い切り寄りかかり、天井を見上げて門倉は廃人になる。
その隣で机へ上体を寝そべらせ、九流は顔を突っ伏して項垂れていた。
「今、何時?」
門倉の質問に九流がのそりと体を起こして腕時計で時刻を確認した。
「五時」
「くっそ・・・、天気は?」
「は?」
「雷まだ鳴ってる?」
スクロールカーテンを開けて窓の外を見る門倉は晴れ渡る雨上がりの空にガックリと肩を落とした。
「・・・なんだ?」
「いや、もういい。帰ろうか」
サクサクと帰り支度を済ますと門倉は学校を出た。
昼間はまだ雨風がきつかったのを思い出す。
綾人がまだ自分の部屋へいるのかソワソワした。
あわよくば、鬼にかこつけてこれを機に綾人を抱き潰したかったのに予定が覆されてしまった。
「あ〜あ・・・。来年は絶対生徒会なんてやめよ」
大きな溜息を吐いて、晴れ渡る空を見上げ門倉は一人誓った。
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