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番外編・一緒に暮らそう
「綾、またテーブルの上散らかしてる!ほら、そっちに服もあちこち置かない!横になるならこっちの広いソファに横になりなよ!」
「……」
学校から帰ってくるなり門倉は部屋で寛ぐ綾人を叱咤した。
両想いという事で週末のみのお泊まりを解約し、綾人は同棲もとい、同室を強いられた。
初めは嬉しかったし、一緒の時間も増えて幸せだったのだが、それも一週間が経つと段々と疲れてきたのが本音だ。
門倉はとても几帳面で綺麗好きな性格をしていた。坊ちゃん育ちのくせに難なく家事もするし、とても手際が良い。
自分の事は自分でする。とてもシンプルでいい事なのだが、そのペース配分を相手に押し付ける所が綾人には苦痛だった。
綾人自身も部屋は綺麗に越したことがないと思うし、そんなに汚すタイプではない。
門倉が言うようにテーブルの上にお菓子の残骸を残し、羽織っていたパーカーを椅子に投げ捨て1人用ソファにだらしなく寝そべっているが、あと5分ほどしたらゴミはゴミ箱へ。服は脱衣所へ。そして、宿題をする為に椅子に座ろうと思っていた。
「…ちゃんと片付けるからガミガミ言わなで」
ムスッとしながら起き上がり、テーブルの上のお菓子のゴミを片付けながら言うと門倉はまた小言を吐き捨てた。
「ガミガミなんて言ってないだろ。綾はほっといたらゴミ屋敷にするんじゃないかって心配なんだよ」
「ゴミ屋敷になんてしないよ!ちゃんと掃除も洗濯もしてるじゃん!」
心外だと声を荒げたら溜息交じりに門倉に言い返された。
「俺が言わなきゃ動かないくせに」
その一言に綾人はカチンときて門倉を睨みつける。
「別に言われなくてもするしっ!つーか、いつもしようと思ってる数秒前に言ってくるからムカつくんだけど!僕は僕のペースがあるんだからちょっとは譲歩してよ!」
一週間、思い続けては溜まりに溜まった本音をブチまけると門倉は素知らぬ顔で言い放った。
「そんなの綾が俺に合わせてよ。当たり前の事だろ?」
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