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番外編・一緒に暮らそう 14話
「もう一緒に暮らすのやだぁーーー!!!」
門倉浮気疑惑は無事に晴れ、数日が過ぎた今日、綾人は門倉・九流・ざくろを前に大声で叫んでいた。
生徒会室にて昼ご飯を食べているのだが、綾人のそんな叫びなど綺麗さっぱり無視してお弁当を食べる門倉を九流とざくろが横目に見る。
「……また喧嘩?」
ざくろが視線を綾人へ向けて聞くと、その問いに門倉が答えた。
「綾が我儘過ぎなんだよ。アレも嫌。コレも嫌。って…」
呆れ口調で告げる門倉に綾人がカチンときて猛反撃に出た。
「はぁ!?僕が我儘っ?どこが!?変な門限つけて、他の人と遊んでたら言い掛かりばっかりつけて、終いにはド変態プレイばっかじゃん!僕の心と体がおかしくなるっ!」
「綾がいっつも遅く帰ってきて、下心見え見えの馬鹿に抱きついたりするからお仕置きしてるだけだろ。最後は気持ち良くなってメロメロのくせに」
綾人の文句に門倉の言い分が炸裂する。
そんな二人を前に九流はどっちもどっちだなと、呆れた顔でお弁当をつついた。
ギャアギャア揉める二人にざくろも相変わらずだなと、困った顔で笑った。
好き同士なはずなのにいつも喧嘩しては、束縛し合う二人はとても不思議な恋人だと常々思う。
門倉が遠慮すると綾人が悩み、綾人が泣くと困惑しては鉄壁の仮面が外れる門倉。
浮気疑惑も本当に何事もなく、ただただ綾人の気持ちに応えたいと思う門倉の誠意だった。
機嫌が良かったのは綾人が何処へも寄り道せずに毎日自分の側にいてくれたからだとも言っていた。
そんな愛に綾人も感激しては、二人の絆が一層強まったと思っていたのだが、数日後にはまたこの有様で苦笑してしまう。
「そういえば、門倉の理想ぶっ壊すのはやめたのか?」
まだ喚き合う二人に九流が思い出したかのように聞くと、綾人がそうだった!と、吠えていた言葉を止めた。
「理想?何それ?」
門倉が首を傾げて聞いてきて、言いにくいと口籠る綾人に変わって九流が答えた。
「お前は人に理想押し付けるからしんどいって話だよ。自分の求めてるスキルが相手にないといつも仕込むか切り捨てるだろ?」
九流の返答に門倉はなるほどと失笑した。
「で?俺が綾を仕込んでるって?」
綾人へ視線のみ向けて聞くと、天使は小さく頷いた。
「俺、別にどんな綾でも受け止めるよ?馬鹿で短絡的で世間知らずで言うこと聞かないまま育っても、離さす気ないから安心しなよ」
「……なんか酷くない?」
まさに今の自分がそうだとでも言う門倉に綾人の額に青筋がたった。
「どうして?そのまんまの綾ちゃんを愛してるって意味だよ。永遠に……」
スッと顎を撫でられ、門倉の整った顔が美しく微笑んだ。
本当に無駄にカッコ良過ぎる顔に赤面してしまい綾人はふんっと顔を晒した。
この甘い囁きもまた門倉の調教の一つなのかどうかは分からないが、同室を今日こそ本気で解約しようとしていた綾人はまだもう少し、一緒に暮らしてやってもいいかと思い直すほどの威力はあったようだ。
「……ざくろ。こいつらに巻き込まれんなよ。結局バカップルなんだから」
喧嘩のほとぼりが冷め始めた二人を前に九流が馬鹿らしいと、ざくろへ助言をした。
ざくろも本当、その通りですね。と、呆れた顔で二人を温かな笑顔で見つめた。
ー 完 ー
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