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第4話
「ああ、楽しかった。
ねえ君、大丈夫?」
「あ、え、は、はい、何とか……」
初めてだったのにあまりにも激し過ぎた行為のせいでぐったりしていると、星さんが僕の服を直してくれた。
もっとも直してもらっても、僕と星さんが出したアレコレで汚れているので、とてもじゃないが外に出られる状態ではないけれど。
「うーん、シチュエーションエッチは楽しいけど、やっぱり立ってやるのは動きが制限されてイマイチだね。
2回戦はベッドに行こうか」
「えっ、ちょっ、待って下さい!」
僕の腕をつかんで寝室に連れて行こうとする星さんに、僕は慌てて待ったをかける。
あれだけ激しく動いておいてイマイチなのかとか、2回戦やるつもりなのかとか、ツッコミどころは満載なのだが、何より一番問題なのは……。
「あ、あのシチュエーションエッチってどういう……」
「え? どういうも何もそのままだよね?
運送屋さんと客っていうシチュエーションのプレイなんだよね?
休みの日にわざわざ運送屋のコスプレで訪ねてくるものだから、てっきりそういうつもりなんだと思ったんだけど違うの?」
「ち、違いますよ!
っていうかコスプレって……」
どこからどう見ても運送屋に見えるように準備してきたのに、コスプレとはどういうことなのか。
まさかとは思うけど、僕が本物の運送屋じゃないことは最初からバレていたんだろうか?
「だって君、よくコスプレして僕の後をつけてきてる人でしょう?
いつも僕の目に付きすいように色んな格好をしてるよね。
いつ話しかけてくれるのかと思って楽しみにしてたんだけど、まさかこんなサプライズがあるとは思わなかったよ」
星さんの説明に、僕は全身の力が抜ける。
僕の尾行がずっと前から星さんに知られていた上に、目立たないようにしていたつもりの変装が、逆に目を引くためのコスプレだと思われていたなんて、僕の苦労はいったい何だったんだと思う。
「あれ、コスプレじゃなくて一応変装のつもりだったんですけど……」
「あ、そうだったの?
けど、どんな格好しててもすぐ君だってわかったから、やっぱりあれは変装じゃなくてコスプレなんじゃないかな。
スーツも大学生風の格好もチャラ男っぽい茶髪もみんな可愛かったよ。
身長が10センチくらい高くなってた時はさすがに笑いをこらえるのに苦労したけどね。
あれ、シークレットシューズ?」
星さんの楽しそうな様子に、僕はさらに脱力してしまう。
「あの、僕ずっと星さんをストーキングしてたんですけど……。
今日だって、こういうことするつもりなんか全然なくて、本当は運送屋のフリをして星さんの家の中を覗いてみたかったんです。
すみません、こういうの気持ち悪いですよね」
「ん? あー、そうか、そういうことだったんだ。
いや、別に気持ち悪くはないかな。
君は見た目も僕のタイプだし、いつも色んな格好をして僕の後をついてくるのがいじらしくて可愛いなと思ってたし、今さっき体の相性もいいってことがわかったしね。
それに君がストーカーなら、僕は強姦の犯人になっちゃうわけだけど、君は僕を訴えたりする?」
「い、いえ、そんな、とんでもないです!」
「だよね。
君もすごく楽しんでくれてたみたいだし」
星さんの言葉に僕はさっきまでの自分の痴態を思い出して赤くなってしまう。
「まあ、いいんじゃないの?
君も僕も、ストーカーでも強姦犯でもなくて、さっきのは単なる恋人同士のシチュエーションプレイってことにしておけば」
「こ、恋人……」
星さんの口からさらっと出た「恋人」という言葉に、僕は呆然としてしまう。
「それとも君は嫌?
僕と恋人同士になるのは」
「い、いえ! 嫌じゃないです、嬉しいです!」
僕が慌ててそう答えると、星さんはにっこりと笑った。
「よかった。
じゃあ、そういうことで。
さ、そうと決まればさっそくベッドで2回戦と行こうか」
「え、ちょっ、待っ」
そうして僕は、星さんに担ぎ上げられて、通り過ぎたリビングやダイニングを眺める余裕もなく、あっと言う間に寝室に連れて行かれ、そのまま2回戦、さらに3回戦の途中で気を失うまで星さんに付き合わされたのだった。
〜完〜
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