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「山」「観覧車」「危険なヒロイン」

三題噺のお題メーカー使用。 ホラーしばりかぁ。 そしてBLでヒロイン……。ヒロイン系男子ってことですかねw 小説のリハビリ( ̄▽ ̄) ------------------ 2年前ある噂が地元に広がり、更にSNSによる情報拡散で全国まで広がると、地元に根付いていた懐かしさを感じさせる『らくえんち』は経営難で閉鎖された。 「こんな細い道登っていくの?道あってる?」 「あってるよ。2年前だからこの古いナビなら普通に道案内してくれるもん」 黒の軽自動車に青年2人が乗っていた。運転手は黄金色の髪に耳元を刈り上げ、眉毛は細い。薄い唇はニヒルな笑いを浮かべていた。助手席に乗っている青年は染めていない黒髪に大きな黒縁メガネ、顔は小さく、眉毛は恐怖で下に下がっている。シートベルトを両手で握り込み、身体を小さくして忙しなく目を左右に動かしている。 「なんでこんな夜中に行くの?怖いよ……」 「おお、いいビビり方だなー。楽しい体験するために行ってんだから当たり前じゃん。いいの撮れたらYouTubooアップして、目指せ登録者100人!」 「こんな夜中に楽しい体験なんてあるの?夜景とか?でも夜景なら人が起きてる時間の方が綺麗なんじゃ……」 「そこは100人とか目標ちっさ!ってツッコんでよ」 「僕YouTuboo見ないもん……」 明らかに運転手と助手席の青年とでは温度差があるが、車の移動権は運転手にある。信号もない山道を走っているので車は止まらない。もし止まっても、こんな山道では怖すぎて降りようとも思えないビビりの青年はもう身を任せるしかない状態である。 『目的地付近です。案内を終了します』 「ほら着いたぜ」 「ひっ……ちょちょちょ、い、いやいや、こ、これ怖すぎる。無理無理無理」 山を切り取ったように人のいない遊園地のゲートが見えた。入口にでかでかと書かれている『今までありがとうございました』の文字は温かさを感じる丸字に、真っ暗な園内は対極である。暗闇は本能的恐怖。楽しい体験をする前にもう恐怖である。 「携帯バッテリーよし、容量よし、1時間は撮影出来るな。おっしゃ準備オッケー、行こうぜ!」 「無理無理無理!まじで無理!俺行けない!」 運転手は嬉々として車から降りていく。エンジンを止められ、車のライトもなくなり、更に辺りは暗闇になる。もう怖いゲージは振り切り、助手席の青年は滝のように涙を流し、車内から一歩も動かない。運転手の青年は呆れたように短く息を吐く。 「ここまで来たら今更じゃん。行こうぜ」 「無理、絶対無理。歩けない。腰抜けてる。ねぇ帰ろ?」 「やだよ!3時間かけて来たんだぞ。ガソリン代も高速代もバカになんねぇよ。お前の怖がってる姿を撮りたいんだよ。だから怖がってていいって。俺いるじゃん」 「え!言ってたこと違うじゃん!楽しいところ行くって言うからついてきたのに、何怖がってるって!」 「あ。失言失言」 「嘘ついたの?!怖いの本当苦手なんだよ!ここに来るまでにかかったお金は払うから本当帰ろ?僕運転出来ないよ」 「だから俺と行くしかないって!ほら、覚悟決めて行こうぜ!」 「うわっ、引っ張らないで!む、無理!嫌だよ!」 「本当に来た」 「え」 「……え」 2人の青年以外の声がはっきりと聞こえ、ぴたりと声と動作が止まる。助手席の青年は怖すぎて身体が硬直し、運転手はすばやく周りを見渡した。すると軽自動車のフロントの前にぼんやり人型が見える。 「出た幽霊」 「……○*・…¥5〆=¥°・8?!」 運転手は目を見開いて人型を凝視し、助手席の青年は言葉にならない声を発した。助手席の青年は全く動かなくなってしまい、恐怖のあまり意識を手放したようだ。 「幽霊は話せるのか?」 「幽霊と話したことはないから僕はわからないよ」 ぼんやりと見える人型からしっかりと声が聞こえる。そして声質に恐怖を感じるものはなく、生きている声だ。顔が見たくなって運転手の青年は携帯のライトをつけて人型に向けた。 「っ、眩しいんだけど」 「……足あるな」 「足だけじゃなくて五大満足だよ。君たちはどうしてここにいるの?本当に人に会えるなんて思わなかった」 「あんたこそなんでこんなところにいるんだ?こいつビビり過ぎて失神したじゃねぇか」 「静かになったと思ったら気失ってるんだ?ははっウケる」 人型は同じ年ぐらいに見えた。半袖半ズボンから覗くすらりとした手足に白い肌。異様に目を引くのはシルバーの髪だ。 「質問に答えろよ」 「そっくりそのまま返すよ?」 そう言われて確かに言ってないなと思い立つ。 「2年前にこの遊園地が閉鎖になったろ。その時にある噂が広まって、その噂が本当か見に来たんだよ」 「あーなるほどね。一時期はすごい人だったけど最近はそういう人達きてなかったからもう来ないんだって思ってた」 まるでずっと見てきたかのような言い方に薄ら寒い気持ちがよぎる。 「……俺は答えただろ。お前も教えろよ」 「えー。嫌だ」 ケラケラ笑いながらその男ははぐらかした。手汗が滲み、滑り落ちそうになる携帯をしっかりと握る。 「……興が削がれた。帰るわ。じゃあな」 「……っふふ」 シルバー髪の青年は思わずと言ったように笑いが漏れる。ここが昼間で、人が大勢いれば違和感のない笑いだ。だが今は夜中。人は3人、自分たちしかいない。 「なんだよ?」 「なんとなく気づいてるでしょ?もう戻れないかもって」 「……何言ってんの?」 「しかも2人。来ないと思ってたのにびっくりしちゃったよ。ありがとう。来てくれて」 にこっと首を傾げて笑われた瞬間、背筋から悪寒が駆け上がり、全身の肌が立つ。 ビビる要員は助手席の青年だ。決して俺ではない。俺はケラケラ笑いながらその場をしっかりと撮影する係なのだからこんなにビビってるのは訳がわからない。 「何も話さないのは悪いよね。簡単に教えてあげる」 固まってしまった俺を見ながらシルバーの青年は言葉を続ける。 「僕は思念体。生身の人間じゃない。僕の本体はこことは別の場所にあるんだ。そこで浄化をしてる。穢れを祓ってるんだ。浄化を続けているとどうしても魂に穢れが溜まる。だから穢れでいっぱいになる前に代わりの人を見つけなきゃならなくて、色んな場所に僕は思念体として彷徨ってたんだ」 確かに足はあったのに、話ながらシルバーの青年はふわっと空中に浮き、まるで無重力の中を動くかのようにくるくる回る。 「遊園地大好きでさ。よく思念体で遊んでた。でもそれがいけなかったみたいで、ここ潰れちゃったんだよね。それから本当に寂しくて。人の為に僕は生贄になっているのに、僕の楽しみまで取る必要ないよね?本当人って勝手だよ」 両手を上に向け、肩をすくめて、呆れた典型的なポーズをした青年はハァーと溜め息を吐く。 「僕は26年縛られた。もう僕の魂は限界なのかな?それとも偶然君たちが来ただけ?わかんないけど、わかってることは一つ」 シルバーの青年がスーッと空中から俺たちの方へやってきて、顔がはっきりとわかる距離まで縮まる。 「僕は解放されて、君たちが縛られるんだ。********!」 シルバーの青年が最後何を言ったのか聞き取れなかったが、グッと身体をひっぱられる感覚と共にシルバーの青年は忽然と消え、視界が変わる。 「…………なんだよこれ」 今までいたのは確かに遊園地の入口だった。でも今はどうだ。真っ白な広い空間に俺たちはいる。 唖然としていると真っ白な床は七色の光を発し、まるで映画で見た魔法陣のように輝く。そして地面からツタのような長い植物が生えてきて、俺たちを絡み、その植物は真っ白な空間を真緑に変えるほど生い茂った。 「無事転生されてきたみたいです」 「ほう……。今回は2人。僥倖ですな。50年は持つでしょう」 「では国王に報告しに帰りましょうか」 変な格好をした人間が3人見えた。ローブに包んだ姿は魔術師のようで不気味だ。帰ろうとする姿に、訳がわからないままここに残されるなんてたまったもんじゃないと思い声を荒げる。 「何だこれは!」 「……おや。今回の神子は意識があられる。力が強いようですな」 「すぐに落ちるでしょう。さっ、行きましょう。また長旅だ」 「今夜の宿は良いところに泊まりたいですね」 「国王も今日ぐらい許してくれるでしょう。新しい神子誕生です。素晴らしい日ですよ」 俺の声は完全に無視され、3人の姿は消えた。そして残ったのは俺たち2人のみ。俺がいくら声をかけても黒髪の青年は目を開けなかった。 そして俺もどれぐらい時間が経ったかわからないうちに気を失ったようだった。 2年前。ある遊園地では鏡をふと見た時、小川を覗き込んだ時、観覧車のてっぺんに登った時などにまったく別の景色が見えるときがあったと言う。 見た人は「日本じゃないみたいな場所」「怪物がいた」「ツルがいっぱい茂ってた」と様々なものが見えたらしい。 行方不明者は8万人に及ぶ。知らず知らずのうちに別の世界にいっているかもしれない。 終わり。 異世界転移系の話書きたいんですけど、気力がもたない。笑

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