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1 事後報告は恋のはじまり!?⑧

ホテルの一室で、兄じゃない人に組み敷かれている。 あなたは…… 深い闇の羽が俺を包む。 俺の顔も頬も瞳も、闇の檻に囚われている。 舞い降りた深淵の双眼に…… あなたは誰? 「天見会社長・天見 藤弥」 漆黒の瞳が降りてくる。 「お前の……」 闇色の羽が俺を包む。 捕らえる。 囚われる。 離さない。 唇が額に舞い降りた。 「愛人になる男だよ」 …………………………★ ちょちょちょッ! 「ちょっと待てェェー!!」 「待てない」 「フグフグふぉ~」 フォゴフォゴふぉ~~ 酸素、酸素! 「お前に酸素は要らない。必要なのはこの唇だ!!」 唇に塞がれて、酸素を奪われる。 (違うな、組長) あなたは間違っている。 地球に酸素が存在したからこそ、生命は多種多様の進化を遂げたのだ。 生命活動を営むために酸素は必須である。ヒトもまた例外ではない。37兆個の細胞に酸素を供給せねばならないのだ。 酸素なくしてヒトは生きられない。 「組長ではない。社長だ。天見会は裏社会の頂点に君臨しながら、表向きは法律に乗っ取った合法的な会社という組織の皮を被っているよ!」 こだわるの、そこかァァーッ (表向きって言ったー) (皮を被っているって言ったー) って、そんな訂正いらん。 「会社組織の皮だよ。お前の可愛い亀頭を覆う皮被りとは別物だよ!」 ギャアアァァアアアー♠♠♠ 「なななっ」 なんて事言うんだァーッ 「この……」 ♠♠♠~~ 「アホ組長ォォォォーッ!!」 「組長ではない。社長だ」 訂正するの、やっぱりそこかァァーッ ハァハァハァ 「息が荒いね」 ハァハァハァ 怒鳴ったからな。 あなたのアホ思考のせいでな! ハァハァハァ 「もの欲しそうな目をして……」 くいっ しなやかな指が顎を持ち上げた。 「淫乱な顔だ」 「………………えっ」 「男を誘う顔して……私が欲しいのかい?」 「なっ!」 「そんな涙目で見つめられては、落ちない男はいないよ」 「ちがっ」 涙目になっているのは、苦しいから! 怒鳴って、酸素不足になって、窒息しかかって苦しかったから! 「たっぷり、あげよう。私を感じなさい」 哺乳類は生命活動を営むためにO2が必要なんだ。 なのに……… ブチュヴヴヴ~~~💋 酸素を奪う。 奪い尽くす唇 気持ちいいのはきっと、酸素不足の脳が正常な判断をできないからだ。 キスがこんなに気持ちいい筈ない、から……… 意識が暗転する。 「愛人に落ちなさい、佑都……」

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