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2 孕ませたいくらい愛している!①
(唇じゃない)
「……あぁ、明朝だ」
(唇じゃないんだ)
「手筈は整えてある」
(俺にっ)
「一生に一度だからな」
(必要なのは……)
「一生忘れられない……」
……にしたい。
瞼にかかった前髪が落ちる。
男は仰いだ。
膝の上の佑都を撫でながら、なにもない天井を……
不思議な気分だよ。
口角に浮かんだ影は、笑み
(俺に必要なのは……)
酸素だァァァーッ
「フゴフォゴゴぉぉぉ~ッ」
覆い被さる影に口を塞がれた。
パンパンパンッ
酸素、酸素!
パンパンパンッ
あなたの肩と背中がどれほど痛かろうが、こっちは必死だ。酸素が欲しいんだ!
パンパンパンッ
ようやく察したか。唇が離れた瞬間、酸素を胸いっぱい吸い込んだ。
ハァーフゥーハァーフゥー
「……ヒッヒッフー」
ハァーフゥーフゥーヒッヒッー
「……フー、ヒッヒッーフー」
ヒッヒッフー
「ヒッヒッフー」
ヒッヒッフー!!
……って、誰だー
変な呼吸法、仕込んだのは。
「ラマーズ法だよ」
名称聞いとらんわ。
俺は……
「妊婦かァァァーッ!!」
「孕ませたいくらい愛しているよー!!」
「ギャアァァァー♠」
…………………………ぱた。
俺、再起不能。
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