31 / 35

6 万事休す!!⑤

天使のお兄様は、そんな発言しないんだ! 煽って、耳まで真っ赤になる恥ずかしい吐息を吹きかけて、ふしだらで淫らな言葉は使わない。 変な喘ぎ声を俺に出させて、興奮している人を天使とは言わない。 ………………それは変態だ。 「お前は何を言ってるんだ?」 「わわわーッ」 自称・天使がアソコの毛を引っ張った。 「陰毛というんだよ。言ってごらん」 プルプルプルー 「なに言わせようするんだッ」 変態天使! 「変態ではない。私は社長だ。両親は離婚しても、心はお兄様だよ」 プルプルプル~~ あなたは変態です。 「お兄様命令だ。今のうちに言いなさい。これは、もうすぐなくなってしまうのだから」 ……… ……… ……… 変態天使ィィィッ! 空耳だと言ってくれ。 しかし一縷の望みは、たった一言の無慈悲な言葉によって打ち砕かれた。 「剃るよ」 バサンッ 「毛が!」 塵一つないシートに縮れた毛が零れている。 なぜ、あなたはッ 「あぁ、これかい?護身用だよ」 「嘘だ!」 ハサミで銃弾が防げるものか。 「護身用はもう一つあるよ」 容赦なく短くされた毛を摘ままれて、抵抗する間もなく。 ジョリリリリィ~ またひと摘まみ……縮れ毛がシートに落ちた。 「護身用のT字カミソリだ」 「T字カミソリが護身用になるものかァァッ!」 T字カミソリで、どうやって銃弾を防ぐんだ。教えてくれ、変態天使! 「こら。暴れるんじゃないよ。興奮する気持ちは分かるが、大事なところを傷つけたらどうするんだい」 「大事なところって?」 「ちんこ」 ……… ……… ……… 俺には天使語が分からない。 「雄の生殖器だ。チンポとも言う」 「言うなー!変態!」 「お兄様だよ!これは陰毛だよ」 お兄様と陰毛を並べるな。 つか、あなたは陰毛と同格でいいのか? ……… ……… ……… ん? 藤弥さんが指先に持ってるひと摘まみの毛って~~ 「もちろんお前の縮れ毛だ」 「ヒィィ」 「肌色見えてきたね」 「ヒィィィィ~」 股間を覆う大人の証。 黒い茂みが! 「やめてくれー!!」 「暴れるんじゃない」 「おとなしくしてたら、なくなってしまう」 大事な……いんもぅがァァッ 「なくても日常生活、さして困らない」 「そういう問題じゃない!」 「大人しくしなさい!」 「なぜッ」 「私が剃るからだよ」 「なぜーッ」 「だから。私が剃るからだよ」 それ、さっき聞いた。 「しししっしー」 「下の毛」 そう、それ! ソレは俺のもの。 勝手にされる云われはない。 下の毛は、 「俺のもの」 「私のものだ!」 なぜーッ 「お前の全部を私のものにしたいと思っている」 つんつん ひとつまみの陰毛を藤弥さんが引っ張る。 「だから、お兄ちゃんに剃られようね」 「だからじゃないィィィーッ!!」 ……………………………妙齢のおとなが。 「しもの毛ないと恥ずかしい」 顔を隠して呟いたから。 藤弥さんがどんな表情で見下ろしているのか、分からない。 ふぅっと…… 一筋の吐息が降りてきた。 「あぁ、そういう事か」 藤弥さんが理解してくれた?

ともだちにシェアしよう!