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6 万事休す!!⑥

「お前の一番の理解者は私だよ」 「う……」 ……………… ……………… ……………… 「……ん」 「間合いが長く感じたのは、私の気のせいかな」 「そそっ、そうかな~」 ダメだ、ダメ! 藤弥さんを信じよう。 藤弥さんは、いつも俺の味方だったじゃないか。 出逢ってから、ずっと…… グイっと引き寄せられた。 大きな手で俺の腕と肩を抱いて、そうして車の後部シートに俺を座らせてくれた。 トクン 心臓が鳴った。 藤弥さんの胸も暖かい。 トクトク、トクン 心臓が奏でている。 「アゥ」 食まれた! 左胸の実。 「おかしいね。まだ緊張しているのかい。体温を接触させると人はリラックスすると、なにかの本で読んだのだが」 「アフん」 「体温が上昇している。心音も大きいね」 チュウウゥゥゥゥ~ 「ひんうー!」 こんな事されて、リラックスできる訳ない。 強く吸われて、予期せぬ声を上げてしまった。 はぅはぅハァ 淫らな息遣いがついて出て、口を塞ごうにも手が! 動かない。 藤弥さんの両腕に、がっしり絡め取られている。 自由がきかない。 「違うね……」 涙のにじんだ目尻を舌が拭った。 「お前が奪ったんだよ」 俺が……… あなたを……… あなたは自由がなくて。 あなたは不自由しているのか。 (つまり、それは俺があなたを困らせている) 「それも違う。社長という立場を使ってお前を守れる事に喜びを感じている」 「でも不自由なら」 自由を奪ったのが俺なら。 自由になる権利は藤弥さんのものだ。藤弥さんに返さなければ。 「要らない」 「でも」 「自由は一人だという事だ」 確かにお前の言う通り、時には不便を感じるかも知れない。 「お前のいない自由に価値はない」 一人の時間に意味はないんだ…… ぎゅっと抱きしめられた。 体温が熱い。 左胸がドキドキする。 「お前の鼓動が響いてくるよ」 やっぱり、聞こえてた。 恥ずかしい。 「心臓が飛び出してしまわないように、口を塞いでしまおうか」 暖かい唇が、唇を塞ぐ。宣言通りに。 けれど予告もなしに、やらしく舌を動かす藤弥さんはやっぱり意地悪だ。 チュプチュプ、チャプチャプ…… 濡れた水音が鼓膜を犯す。 「私の自由を全部あげよう」 あなたの言葉に潜んだほんとうの意味をまだ知らない。 チュプン 「なにッ」 なにかが入ってきた!!! あらぬ場所。 誰にも触られた事のないその場所のひだをなぞって。 「私の指だよ」

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