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第8話
う、うわ……熊のマスコットだけあってさすがにアチラも熊サイズ!!
目の前に披露された立派過ぎるモグたんの屹立に僕は思わず卒倒しそうになりました。
『さぁ、今からお仕置きとしてコレ を挿入 るから笑顔を絶対に絶やさないように。あと、声を上げる時は腹筋を必ず意識するんだ。そうすることで腹式呼吸の練習になるからな』
一見最もらしいことを口にするモグたんでしたが、今からやろうとしていることは果てしなく疑問が付きまとう案件だと僕は感じてしまいました。
そもそもどうして今僕は番組のセットであるベッドの上で、一度はキュンとしてしまったとはいえ熊の頭を被った見知らぬ男性とこんなことになってしまったのでしょうか。
秘密の花園を何度も激しく貫かれた僕は、上擦った甘い声を洩らしながら頭の片隅にそのような後悔の念が過ぎったのでした。
精も根も尽き果て賢者タイムへと突入した僕は、そこで思わず自分の目を疑っような光景に見舞われたのです。
『やっぱりセックスする時にこの頭は邪魔だな。キスだってできやしない』
モグたんの中の人は熊の頭を外すと、予想打にもしなかった素顔がそこへと現れたのでした。
「ふぁっ?!劇団季節の人気俳優、朝比奈律一 !!うわぁ!僕、大ファンなんです!」
朝比奈律一、30歳。僕が音楽科のある大学を目指したきっかけの人で、ミュージカル界のイケメンスパダリ俳優さんなのです。二年前に突然引退してしまったので“元”ですけど……。
「え?何でこんなとこに?」
「俺は元々歌のお兄さん志望だったんだ。キミが受けた11代目のオーディションは実は二年前にも一度やっていて。だが華やかすぎる俺のスター性で、オーディションで失神者が続出してしまってな。中止になってしまったんだ」
全く知らなかった過去の事実に僕は驚きの表情を浮かべました。
「その後どうしても歌のお兄さんになりたかった俺は、その座を諦めきれなくて顔を隠すことで……モグたんになることで参加を認めて貰えることとなったんだ。そんな中、ようやく決まったお兄さんがよりによって、名もなき音大出身……そしてフリーターであるキミとは。しかしこの半年、ゆうみお姉さんにコケにされても健気に頑張る姿を後ろから見ていたら力になりたくなってな。ずっとそのタイミングを伺っていたんだ」
「え……そんな風に僕のことを?」
「あぁ。ついでに意地悪したい程可愛いとまで思っていたんだ。でも、最高の歌のお兄さんへと育てたいという気持ちは本物だ。だから俺のことを信じて、全てを委ねてみないか――」
真剣な表情でこちらを見つめた律一さんに、僕は思わず胸が熱くなるのを感じてしまいました。
どうしよう。
憧れの人からの嬉しい提案……。
乗らない訳にはいかないですよね。
「はい、喜んで」
高鳴る胸を押さえながら僕は答えると、律一さんは優しいキスの雨を僕の顔へと降らせたのでした。
因みにこの時、律一さんが“全て”と言った箇所をうっかり聞き逃した僕は、公私共に律一さんの思い通りにたっぷりと愛され調教され、色々な意味で最高の歌のお兄さんへと変貌を遂げたのはここだけの秘密にしておいて下さいね。
おしまい
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