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Ⅰ
短かった夏休みも明けて、暑苦しい夏からだんだんと涼しくなってすぐそこの秋に向かっているこの時期をここの制服を着て迎えるのは三回目だ。
一度目は特に何もせず。二度目は周りに言われた通りの事を実行しただけ。そして三度目は…。
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「あぁ…。暇、だなぁ。」
授業中にあたる時間の今、校内では慌ただしく生徒や先生が縦横無尽に駆け回り、何処からか持ってきた段ボールを分解しては色を付けたり、先生達と和気あいあいと話している生徒もいる。
それを傍観するだけの彼、鳴尾 蓮 は学校のロビーに並んでいる椅子の背に体重を預けて座り、4階まで吹き抜ける天井をボーッと見上げていた。この学校に通う三年生である証の赤い校章が胸元にキラリと窓から差す太陽の光の反射で輝く。
この時期は毎年文化祭の催しの準備用へと時間割が変更になる。午後からは基本その為に校内全体は動き出す。本番も来週に迫っているので、今は一心同体になって完成を目指して追い込んでいるのだ。
しかし、もう蓮らの学年は三度目の文化祭。勝手が分かってきているのか作業は殆ど終了に向かっていた。
(三回目にもなると、流石に周りの手際も良くなって、する事もずいぶんと減るな…。)
蓮の周りには人が近づかない。
身長も高く、スラっとした背丈で顔も格好いいと言われる部類なのに少し着崩した制服に、元々の髪色が赤茶色くその上本人が無口な為に周りから誤解を生んでいるのだ。
『なんだか怖くて近寄りがたいよね。』
そう周辺から言われている事に蓮はもう慣れてしまっていた。特に気にもせず、苦手なら近づかなくていいし敢えてこちらからも行かないようにしている。
ただ、特定の一人を除いて…。
「鳴尾せんぱーい!」
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