5 / 13
Ⅴ
---
「ただいまー。母さーん、晴。」
大きなマンションの10階。そこは俺の家族も晴の家族も住んでいる。2つの家族はお隣様同士で、蓮は二歳の頃、晴はまだ母親のお腹の中にいた頃に新築マンションが出来るという見学会に居合わせた。
それぞれ両親も年齢が近いからか、意気投合した後にお互いもしもの時にすぐ助け合えるという理由で隣の部屋を選んだらしい。
「まぁ!晴ちゃん!おかえりなさい。相変わらず可愛いわぁー!」
晴が生まれた時から知っている蓮の母親は、容姿も可愛く性格も良い彼を自分の子供の蓮と同様、いやそれ以上に可愛がっていた。
「いやいや、お母さんには負けますよー!」
「もう、晴ちゃんったらー!」
嬉しそうに会話する晴と息子の前ではあまり見せない嬉しそうな母親の姿を蓮は見守る。
「ほら、晴。先、荷物置いて着替えるぞ。」
晴の頭をポンと叩いて、自室へと誘導する蓮。
「夏休み明けて初めてだよね?蓮の家。」
「んー。そうだっけ?」
家が隣なのに晴が最近泊まりに来ていなかったのは、文化祭実行委員で朝早く行かないといけない為だった。蓮を気遣って、朝起こすのも悪いからという理由で週末限定で晴の家に行く事が多かった。
(朝起きるのとか気にしなくて良いから一緒に居てぇのに…。)
なんて、蓮は思っても口には出す事が無かった。
バタン。
蓮の自室の扉が閉まると直ぐ、どっちからとも無く抱き合う。晴はすっぽりと蓮の胸の中に収まる。
求めていたお互いの体温がやっと得れた二人は安心感も同時に得た。
埋もれている晴が上を見上げると、すぐそこに蓮の顔が近づいてキスをする。
ともだちにシェアしよう!