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明日から夏休みだってことで浮かれたやつらが騒いでいるこの学舎の一角。特別教室棟にある彫塑準備室とかいうなんともまあマニアックな教室で、見目麗しい美少年に壁ドンされている平々凡々な俺。
ゆっくりと迫ってきたキレイな顔に一発ぶちかましたくなるもぎゅっと拳を握りしめて堪える。そんなことをしたら後が怖い。確実に殺される、こいつの熱狂的なファンたちに。
「ねぇー、ちゅーしよ?」
「いや、っ……んっ」
これから何をしようとしているのかなんてお互い分かりきってるのに、焦らすように口元に笑みを湛えて、すんでのところでピタリと止まった。やるならさっさとやれ、と抗議しようと口を開いたら、見計らったように唇に柔らかいものが重なる。
こいつ……。『しよ?』って疑問形で聞いてきたくせに、最初から俺の答えなんか聞くつもりなかっただろ……。
重なるだけならまだしも、とっさに固く閉ざした唇をツンツンと舌でつつかれた。
「っ、んん……っ……ふ……ぁ」
いやいや、べろちゅーなんて……、とか思いつつもあっさり侵入された。無理無理言ってるけど、正直こいつとキスするのはすごく気持ちいい。不幸なことにそれを知ってしまってるから止められない。結局いつも、こいつの好きにされるがままだ。
口の中を好き勝手あそばれてムカついたから、反抗するように舌を絡めると、快感に似たゾクゾクとしたものが背筋を駆け下りた。楽しそうに俺の舌を弄んでいるこいつの制服を引っ掴み、ずるずると座り込んで床に手をつくと何かに触れた。
何だろう、とちらりと横目で確認するとため息が出た。……正確には悩ましい吐息となって、俺の唇を貪ってるこいつの口に消えていった。
『男女交際は明るく、健康的で高校生らしいお付き合いにしましょう』
LHRで配られた『夏休みの心得』に書かれていた一文。前にいるこいつがこのプリントに目を通したとは微塵も思ってないけど。
そもそも高校生らしいって何だよ。どっからどこまでなわけ?こうやって下半身をまさぐられながら、同級生とのキスに興奮し始めてるのはセーフ?じゃあ緊縛とかSMとかアブノーマルなプレイに走ったらアウトなわけ?
ああでも、あくまでプリントでは『男女交際は』って前置きされてるから、同性同士は当てはまらないのかな。そうだとしたら、今俺たちがしていることは誰にも咎められないけど、実際のところ誰かにバレようものなら確実に死ねる。そこそこ楽しい学生生活とお別れしなくちゃいけなくなるな……。
「おーい、戻ってきて、こっちに集中、ね?」
「集中、してるッ、てば……!」
「えー?ほんとに?」
「っぁ、んっ……はぁ……」
疲れてきたからいい加減離れろ、とこいつの胸板を目一杯押した……つもりだったけど、震える体じゃ抵抗らしい抵抗すらできない。
ああ、普段からもっと鍛えときゃよかった。そうすればもう少しマシな抵抗ができたんだろうな。なんて全然関係ないことを考えてしまうのは、こいつに溶かされる自分がいることを認めたくない気持ちがほんのちょっとだけ残ってるからだ。
キスだけですっかり骨抜きにされた俺を見下ろして、にやにやしてるこいつの顔を張っ倒したい。もうこの際、校内一のイケメンとかどうでもいいわ。とりあえず殴らせろ。一度で良いから殴らせてくれ。
キッと睨み付けた俺をこれっぽっちも意に介さず、こいつは嬉々とした表情で続けた。
「もうとろとろだ、可愛い~。そろそろこっちもいいかな?」
「っ……はぁ、や、めろ……さわんなっ……」
「イイね。ふふ、ここ、ゾクゾクするでしょ?」
「あぁぁッ、いやっ、やだっ……」
なれた手つきでベルトを外されて、スラックスの前が寛げられた。抵抗もむなしく優しく取り出されたモノはすでに完勃ちしていて、先から蜜を溢した。
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