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君とおでんを食べたい(3)
テーブルの上は蓋をしてあるおでんや、飲みかけの酒がそのまま。電気もつけっぱなしの明るい部屋で、俺は何をしてるんだ?
「んぅ、くっ、ふぅ……」
来ていた服をたくし上げられて、そこに谷川が唇を寄せて舐めたり吸ったり。最初はこんな事で感じたりしなかったのに、今では癖になっている。ジワジワ染みるように気持ち良くなって、疼いてきてる。これが開発というやつなんだろうか。
「腫れて、切なそうだね彰さん」
「嬉しそうに言うなよっ」
「え、普通に嬉しいし。それだけオレ達、愛し合ったって事だし」
「バカっ!」
甘噛みされると気持ちいいとか、昔なら冗談だったのに。
酒のせいなのか、気持ちいいせいなのか世界がぼんやりしてる。気持ちいいのに、他人事みたいだ。フワフワ浮いてる。
「あっ……はぁ……」
片手がゆっくり体を撫でて、ズボンの前を開ける。少し窮屈だった部分が解放されて楽になったけれど、下着ごと指先でなぞられると直接的な気持ちよさがこみ上げて声が出てしまう。
「嬉しいな、これも。感じてくれてるんだ」
「ばか、よせってっ」
弱い筋の部分を指でなぞられ、大きな手の平で撫でられてビクビク反応している。我慢していた先走りがジワッと、小さなシミを作った。
「いいじゃん、オレもこんなだし」
「っ!」
そう言って、谷川も自分のズボンの前を開けてこれ見よがしに俺に見せつけてくる。いつも以上に準備万端といった感じの昂ぶりが、まだ下着の中でも感じられた。
「ねぇ、触ってくれない?」
「でも……」
「お願い、彰さん。オレのこれ、慰めて」
艶っぽい表情と声で言われたら、恥ずかしくても拒めない。それに布越しに擦り合わせられるだけで気持ちいい。
誘惑のまま谷川の昂ぶりに手を伸ばして、遠慮がちに扱いていく。手に伝わる形や熱がちょっと生々しく思えてしまう。
俺の上で、谷川は気持ち良さそうに眉根を寄せている。女子に人気のイケメンが、切ない表情で息を乱している。
ちょっと、嬉しいかもしれない。
自然と触れる手が大胆になって、撫で回すだけじゃ満足できなくなって下着を脱がせにかかった。そして現れた捏ねくり回すようにして撫でると、手の平はヌルリとしてきた。
「んっ、彰さん積極的。エロいね」
嬉しそうにしながら谷川も俺のズボンと下着を脱がせてしまう。自分も煩わしいのか脱いで。上の服は着たまま下半身だけって、変態っぽいし妙に恥ずかしい。
でもそんな事を思えたのはここまで。谷川が自分の鞄からジェルを取りだして、それを後孔へと塗ると俺の理性は一気に吹っ飛んだ。
「あっ! んぅ!」
「お酒も入ってるからか、けっこうスムーズ。気持ちいい?」
「んぅぅ! ふっ、あっ」
一本が楽勝だったのか、あっという間に二本に増えた指が中を探るように出入りしている。腹の中が刺激されて、奥がキュッと切なげに疼いた。
「それとも、自分で慣らしてくれた?」
「それはっ」
「へぇ、嬉しい。オレとこうして、早く抱き合いたかったってこと?」
「あっ! そこ!」
気持ちいい場所を押し込まれて勝手に腰が揺れる。前からも透明な液が溢れてトロトロと滴ってくる。頭の中も徐々にぼんやりしてきた。
「最高に、可愛い。彰さんが自分でするところ、今度見せてね」
「い、やだ」
そんな羞恥プレイ耐えられるか!
指が増えて、少し性急に解されて抜けた。そこにぴったりと当てられた谷川の欲望は、とても熱くなっていた。
「息、吐いてね」
足を抱えられ、甘く優しく囁かれて、唇や額にキスをされて。その間に押し入ってきた肉杭は狭い入口を容赦なくこじ開けて俺の中に入ってくる。
痛みに上がった声は、何度も慣らすように挿送されるうちに快楽に変わった。気持ちいい部分を抉るようにされたら、一気に頭の中は真っ白だ。
「中、熱くなってる。お酒のせい? それとも」
「あぁ!」
「興奮してる?」
見下ろす谷川の嬉しそうな顔を見上げる。幸せそうな顔をして、欲情に濡れて。とり澄ましているこいつがこんな顔をするのはいつも、こうして体を重ねている時だけ。
だからこそ俺も、満たされている。
「もっ、して……?」
腕を伸ばして受け入れると、谷川はふにゃっと笑う。そして望み通りに中を一杯にしてくれる。余裕も理性もそぎ落とされて、ただ喘ぐばかりで必死に背中にしがみついて。打ち付ける様な交わりに、俺はあっという間に陥落した。
「んっ、ふぅ……」
喘ぎまくってぐったりと体が重い。四肢を投げ出すようにベッドに寝転んでいる俺の中に、まだ谷川がいる。
「彰さん、もう少しだけ」
「え? いや、無理……」
20代前半の体力は30目前にはない。第二ラウンドなんて続けては無理だ。
けれど谷川は達した直後の俺の昂ぶりを握り込んで、先端を中心にまた扱き始めてしまう。
「ちょ! 待て!」
敏感になっている部分をそんなにされたら力が抜ける。ビクビク震えて、そして駆け上がってくるのは尿意のような切羽詰まった感覚だ。
「ダメだって! おい、やめっ!」
「知ってます? 男も潮って吹けるらしいっすよ」
「知るか! あぁ!」
腰が抜けたみたいに力が入らないまま、焦燥感だけが凄い。尿意を我慢し続けている感じがあって、どうにもならない。今すぐトイレに駆け込まないと間に合わないくらい焦っている。
「だ、めぇ……漏れちゃうっ」
丹念に扱かれた部分からゾクゾクとした快感が這い上がってくる。中が引き絞られる感覚なんてイク寸前みたいな切なさすらある。完全に勃起しないのに、なんか出そう!
「いっ、あぁぁ! あっ、やだぁ!!」
決壊したみたいに扱かれる先端から透明の液体が吹き上がる。絶頂以上の快楽と、お漏らしをしている羞恥や焦りが混ざり合って泣きそうになる。体もシーツもびちゃびちゃになるくらい漏らした俺は恥ずかしさに泣いていた。
「すっご……エロい」
「ふっ、うぅぅ」
生唾を飲んだ谷川が手を離すと、完全に力が抜ける。お漏らしも止まった。
体中べちゃべちゃだけれど、臭いはしない。でも、気持ち悪いし恥ずかしいしで顔を隠した。
「えっと、風呂」
「涼太……」
「え?」
「出てけ!!!」
滅茶苦茶に暴れて、俺は谷川を部屋の外へと押し出してそのまま鍵をかけてやった。そして、部屋の惨状を見て気が遠くなった。
布団、壊滅。床、掃除……
「はぁ……」
変態の彼氏を持ってしまった気がして溜息が出る。それでも心から嫌いにはなれないのだから、重症だ。
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