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クリスマスSS 1

棗は目の前に置かれたド派手な三角帽を眺め、フリーズした。 「……なんなんだよ、これは」 「なにってクリスマスパーティーの帽子だろう。ほら、ちゃんと被って」 言いながら、和巳が強引に紙でできたキラキラの帽子を被せ、小学生のパンツに入っていそうな白ゴムを、棗の顎に滑らせた。 「ふっふふふふふ。あーかわいい。あーあー、うちの子かわいい」 ニヤケ顔で頬杖をつく男に、いら立ちが募る。 ああまただ。 この男はなんにも変わらない。 なんにもわかっちゃいない。 その態度に今までどれだけ苦しめられてきたのか。 テーブルにはオードブルやピザ、寿司まで並べられている。 けれど、すべて勢い任せにひっくり返してやりたいほど、腹が立って仕方がなかった。 「……ざけんな! マジで今すぐぶん殴りてえ。なにがかわいいだ。なにがうちの子だ。付き合ってられるか!!」 棗は今しがた被せられた三角帽をむしり取り、和巳に向かって思い切り投げつけた。 大してダメージを与えられず、紙の帽子はポロリと床に落ちる。 「な……棗!?」 「たった二人でこんなバカみたいなもん被ってクリマスパーティーって……なにがしたいんだよ!」 突然怒り狂った棗を見て、和巳が目を丸くしている。 ――あーハイハイこの顔はマジでなんもわかってねえって顔だよな。くそっ。

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