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10粒目

 まりかが亡くなっていたということに少なからずショックを受けた。  死んだ人間に遠慮してたなんてバカかよ、と自分に毒づきながら、それでもやはり割り切れない気持ちが湧き上がる。 棗が好きになった和巳は、まりかが作った彼なのだ。 悔しくて嫉妬で頭が狂いそうになる。 「全部昔のことだ。だから番の解消なんて認めない。抑制剤も飲んで欲しくない。俺じゃだめか」 「アンタこそ俺でいいのかよ。俺のこと子ども扱いするくせに、番う対象として見れるのか」 「正直に言うが、高校生の時から棗が可愛すぎてまずいと思ってた。じゃなきゃ正気じゃない未成年の項を噛んだりなんかしない」 「え……」  耳元での告白に脈拍が乱れる。 あの時和巳は流されたわけではなく、自分の意志で番にしてくれたということか。 脳みそが沸騰して思考が蒸発する。今この瞬間に死ぬんじゃないだろうか。 「……抑制剤飲まないと、多分俺際限なくアンタを欲しがるぞ」 「じゃあ余計飲ませられないな。遠慮しなくていいなら、もう子ども扱いして気をそらすのはやめる」 「そうしてくれ。……ちゃんとアンタの番になりたい」  気が緩んだおかげで涙が出そうになり、咄嗟に鼻を啜って誤魔化す。 見透かした風にニヤけた和巳が、赤くなった鼻先を指の腹で愛おしげに撫でた。 「これもういらないよな」  念を押すような口調がおかしてくて棗は吹き出す。 「頼まれても飲んでやんねえ」  和巳を忘れる必要がないなら、もうこんな薬いらない。 棗はテーブルに並んだ錠剤をかき集め、一つ残らずゴミ箱に放り込んだ。

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