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抱いて 濡れて 溺れて 4
深い、深い溜め息をついた時に、お母さんが普通に、
「お餅何個食べる?」
と訊いて来た。
お雑煮に入れるお餅の数を訊いているとわかったので、ボクは、
「1個でいい・・・」
「私も!」
どこまでも元気な美影ちゃんが手をあげながら答える。
お母さんは笑いながら席を立つと、ガスコンロの前に立った。
お父さんはあまりお酒に強くないので、すでに顔を赤くしてずっと微笑んで、ボクと美影ちゃんを眺めている。
「やっぱり正月はこうして家族で過ごすのがいいなぁ」
「一人少ないじゃん」
「まあ、一人くらいはいいだろう」
ボクがツッコんでもお父さんはにこにこ笑ったまま、目尻を下げた状態でボクと美影ちゃんを見ている。
ボクはお箸を手に取ると、お節の好きなものを小皿に取る。
その時に自然と袖を手で押さえて、料理に付いて汚れないようにしてしまった自分が恨めしい。
それからは家族でお節料理を堪能して、お雑煮も食べて。
初詣に行こうかと話しをしていると、不意にボクのスマートフォンが振動し始めた。
ボクは帯と着物の間に挟んでいたスマートフォンを取り出した。
画面に悠貴さんの名前が表示されている。
ガタッ・・・!!
ボクは勢い良く椅子から立ち上がって、急いでリビングを出て廊下へ出た。
廊下は暖房が効いていないから、ひんやりとしていて、足元から冷たさが忍び寄って来る。
ボクは寒さに負けないように、廊下をうろうろしながら、切れないように祈りながら、電話に出る。
リビングにいる美影ちゃんに聞こえないように、なるべく声を小さく抑えた。
「もしもし」
「薫。起きてたか?」
「はい。ボクは大丈夫ですけど、悠貴さんは寝たんですか?」
時刻はちょうどお昼になっていた。
もしかしたら、あれから病院に行って、処置して、そのまま起きているんじゃないかと心配になる。
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