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抱いて 濡れて 溺れて 5
「ああ、大丈夫。昨夜3時くらいに帰って来て、そのまま寝たから」
「よかった・・・」
「昨夜はごめん。で、これから初詣行かないか?」
「え・・・!」
思わず大きな声を出しちゃった。
慌ててリビングのドアを振り返る。
美影ちゃんに聞こえたかも・・・。
だって、悠貴さんが誘ってくれて、嬉しくて。
「行きたいです。行きます!」
「くすくす・・・わかった。今から迎えに行くよ」
「はい!・・・待ってます」
「じゃあ、後で」
そう言って電話が切れた。
ボクはスマートフォンを胸に抱きしめる。
悠貴さんの声を、姿を思い出しながら、抱きしめる。
「待ってます・・・」
体が浮遊するみたいに、ふわふわして、夢心地の中に佇(たたず)んでいた。
*
ボクはリビングに戻ると、こっそりと台所にいるお母さんに近づいて、悠貴さんと初詣に行くことを伝えた。
悠貴さんとお付き合いしていることは、両親にはきちんと伝えていた。
ボクがこんな容姿でこんな性格だから、二人とも特に驚かなかった。
むしろ初めて恋人が出来たことを喜んでくれた。
今まで美影ちゃんに邪魔されていたことを、二人とも勘付いていたらしい。
「お前は二人の姉と比べても、一番女の子らしいから、女の子として育てた部分が多いからな。うちは三姉妹だと思ってる。家を継がなきゃとかそんなこと考えなくていい。好きなように生きなさい」
お父さんがそう言ってくれたことが、嬉しかった。
もし、もし、大反対されて、変な目で見られるようだったら、家を出る覚悟もしていた。
そんなことにならなくって良かった。
テレビのお笑い番組を観ながらお雑煮を食べている美影ちゃんにばれないように、こそこそしていることにお母さんも気づいてくれた。
微笑みながら小さく頷いて、人が多いから迷子にならないように気をつけるように言われてしまった。
小さい頃から、ボクが迷子になりやすいことを知っているから、お母さんは敢えてそう言ったのだろう。
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