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抱いて 濡れて 溺れて 20
テーブルには、チキンサラダや唐揚げ、ハンバーグなんかが並んでいる。
しかも一品一品の量が多い。
うちは家族5人だけど、それにしても量が多い気がする。
「あらあら、そんな部屋着なんか着て。もうちょっとマシなのあるでしょう」
お母さんはコンロにかけた鍋をかき回しながら、ボクを見るなりそう言った。
「え・・・?何で・・・」
「美影が買って来た服あるでしょう」
「あれ全部レディースだよ。ボクが着れるわけないじゃん」
「美影とサイズ同じなんだから、ぴったりでしょ」
「そうじゃなくて・・・」
男だからレディースの服なんか着ないって言ってるのに。
美影ちゃんは仕事柄、色んな服を着るので、気に入ったものは全部、ボクとお揃いで買い取ってくる。
パンツスタイルにしてくれるけど、でもレディースだから、ウエストがしぼられていたり、切り返しがあったり、デザインが可愛い。
ボクが着たら変じゃん・・・でも・・悠貴さんは可愛いって言ってくれるかも・・・。
ちょっとそんなことを考えてしまった時、リビングの方から元気のいい声が響いた。
「ただいまぁ!!薫は?」
「ただいま」
美影(みえい)ちゃんと魅華(みか)ちゃんの声。
どうやら二人で出かけていたらしい。
ずっと寝てたから、全然知らなかった。
ボクはキッチンからリビングに移動して、
「お帰り。一緒に買い物してたの?」
と訊(き)いた。
二人ともきちんとお化粧をして、黒と白のコートを着て対照的な感じでまとめている。
美影ちゃんはいつものように可愛い系で、魅華ちゃんは綺麗系。
ファッションに全く精通していないボクには、そのくらいしかわからない。
二人は両手に色んな紙袋を下げているから、恐らく買い物をして来たのだろう。
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