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第1話「誘導」
放課後の誰もいなくなった学校。
暗い保健室の中で、俺は今犯されてる。
「や、いやだっ…あっ」
「そう言ってる割には体は嬉しそうだけど?」
覆い被さるこの男がクスリと余裕の笑みを見せ、俺の性器を指先で弄 ぶ。
体が震えて、喉の奥から自分じゃない声が溢れて止まらない。
「ひっ……う、あぁあっ」
体が跳ね上がり、やがて絶頂に達しようとした時、察したかのように ぱっ と手を離されてしまう。
「あっ……な……んでっ…」
寸前で止められてしまい、もどかしさと苛立ちが押し寄せる。
俺を見てまた笑みを見せるこいつの瞳が、窓の外から入り込む夕日の光を受けて怪しく光った。
「イきたい? なら、ちゃんと言わないと」
体の向きを変えベッドに這いつくばる俺の後ろから覆い被さるようにして、こいつは耳元でつぶやく。
低くて濁りのない声。その声を聞くと、腹のあたりがゾクリと震える。
「っ…だ…誰が言うか…」
必死に抵抗してみても、言葉とは反対に体は素直だった。
どんなに意地を張ってもこの状況で逆らえない事は分かっている。
それでも、抵抗しなくちゃ全部こいつに持っていかれてしまう。
プライドも、何もかも――
「ほんと、強情だな」
「っ‼︎」
誘うような甘い声が鼓膜を揺らした。
後ろから耳を舐められながら、性器を強く擦られ体が更に熱くなる。
(今度こそ、本当にもう…っ)
「あ…ぅあ……は、あっ」
「ほら、早く言わないとまたやめるよ?」
意地悪く言葉を吐き、根元を強く握られ体が大きく跳ねる。
泣いてしまえばこいつの思う壺だってのは分かっているのに、出したいのに出せないもどかしさに耐え切れず、とうとう涙があふれた。
「も、も…むり…」
「限界? じゃあ、どうしたい?」
「だ…出したい…」
「それから?」
絶対、言いたくないのに。
一度知ってしまった快感は俺の中に根付いて、こんな風にこいつを求めるようになってしまった。
「い…イキたいっ…」
「イキたいだけ?」
こいつが俺を追い詰めて、追い詰めて…俺の選択肢を誘導していく。
「お…まえの…それ……」
「お前?…前にも言ったよな? 新 …」
チュルリといやらしい音を立てながら耳の中に舌が入ってくる。
直に響くその恥ずかしい音に、とうとう俺の理性は飛んだ。
「欲しい時の強請り方、教えただろ?」
まさか、あんな事があったせいで、こんな事になるなんて……。
「な…成海 …センパイので…イカせて、ください」
――思ってもみなかった。
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