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第38話「僕の方が」
僕は今、とんでもないものを見てしまった。
「んっ、ふっ……ああっ」
クラスメイトの強面な渋谷 君と…
「っ新 ……」
僕が想いを寄せるこの学校の生徒会副会長の上城 先輩が……
「んっ、んんっー‼︎」
体育館裏で……
セ……セックスをしている‼︎‼︎
なんで僕がここに居るかと言いすと、遡ること15分前――
突然、教室に現れた上城先輩に連れられ渋谷君は教室を出て行った。
そのあと僕はすぐに2人を追いかけて
物陰に隠れて様子を伺っていた訳ですが……
「っ新……」
まさかこんな事になっているとは……。
僕は入学してからずっと上城先輩が好きだった。
でも僕なんか根暗だし、ものすごい人見知りだから先輩に告白する勇気もなく、今までずっと見るだけで満足してた。
そんな時、成績上位者になると生徒会からの推薦が貰える事を知り、副会長をしている上城先輩に少しでも僕を知ってほしくて……
なんとか生徒会に入ろうと毎日毎日勉強してやっとの思いで成績上位者の枠に入れたのに――
『よかったな新!』
なのになんで、僕じゃなくてこの柄の悪そうな渋谷君が……
『……べつに嬉しくねえ』
(嬉しくない⁉︎⁉︎ 上城先輩の近くに居られるんだぞ⁉︎⁉︎)
その時、気づけば僕は渋谷君を睨んでしまっていた。
でも、目が合った瞬間すごい顔で睨み返された(気がする)から慌てて僕は視線を逸らした。
『俺、睨まれたんだけど?』
『ははっ、大崎は生徒会に入るって必死だったもんな‼︎ 悔しいんだろ!』
渋谷君の友達Aが謎に爆笑しながらそう言った。(クラスメイトの名前ほとんど覚えてない)
(くそー‼︎ ムカつく‼︎ なんで不良みたいな顔した君が‼︎)
その日から、渋谷君は時々授業を出なくなって、戻ってきたと思ったら渋谷君の体からほんのりと上城先輩のにおいがしたんだ。
いや、ストーカーじゃないよ⁉︎
ただ、好きな人のにおいはすぐに覚えてしまう体質というか……。
でも僕なんかを上城先輩が相手にしてくれるワケないし、諦めるしかないのかと思っていた時――
『新君いる?』
上城先輩が教室に来た。
声を聞くだけで一気に体が熱くなる。すぐ近くで上城先輩のにおいがして心臓がうるさく脈を打った。
ああ、やっぱりこの人が好きだ。って、そう思った。
そしてまた、上城先輩は渋谷君を連れてどこかへ行ってしまった。
たまらなくなって僕はあとをつけて来てしまったというわけなんだが……
「嫌いだ‼︎ お前なんか‼︎」
あんな渋谷君は見たことない。
ボロボロと涙を流していて震えた声で上城先輩に嫌いだと何度も叫んでいた。
「…………わかったよ」
その時渋谷君は下を向いていたから気づいてないと思うけど、上城先輩はすごく悲しそうな顔をしてたんだ。
「ってやば‼︎ こっち来るっ」
色々な事を考えている隙に僕はその場から逃げるタイミングを失ってしまった。
慌てて隠れようとしたけど、この時妙な事が頭に浮かんだんだ。
すぐそこに大好きな人がいる。
その人は今すごくつらそうな顔をしてる。
「………僕ならそんな顔させないのに」
2人の間に何があったのかは分からない。
でも、先輩にこんな顔をさせる渋谷君なんかより、きっと僕の方が……
「っーー‼︎」
その時、勝手に足が動いていた。
「ぼ、僕じゃだめですか⁉︎」
勢いで、僕は先輩の前に出てしまった。
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