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第37話「嫌いだ」

こんなくそ眼鏡なんて…俺の気持ちを一切無視するこんな最低野郎なんて… 大っ嫌いだ。 「最低だ……嫌いだ‼︎ お前なんか大っ嫌いだくそ眼鏡!」 目の前が涙でいっぱいで、体には力が入らなくて、こんな情けない自分も、俺を見下ろす眼鏡も全部全部…… 「ゔ…ぐ……きら、いだ……お前なんか…グズッ…」 「……(あらた)」 「っー⁉︎」 大きな影に覆われ、眼鏡がしゃがんで俺にキスをしようとしてきた。 咄嗟に振り払って押し退けると、ようやく視点が定まり眼鏡の顔が見れた。 「新…」 「もう…いいだろ……十分だろ……」 「新、俺は――…」 俺の名前を呼ぶ眼鏡の声が妙に優しくて頭が混乱する。 でも違う。こいつがどんなに優しく俺のことを呼んだって、心配そうな顔をしたって、こいつがやったことが許されるわけないんだ。 「あっち行け……お前の顔なんか見たくもない」 ほんとにもう顔なんて見たくない。 今の俺を見られたくない。 これ以上こいつに乱されるのはいやだ。 「…………わかったよ」 しばらく沈黙が続いたあと、眼鏡はひと言そう言い残し去っていった。 「うっ、グズッ……ズッ」 ひとりになった途端、また涙があふれる。 俺は一体どうしちまったんだ。 男に犯されて、男を好きになって、また……犯されて……。 頭の中がぐちゃぐちゃだ。 もうワケわかんねえ。 「グズッ……会長……」 ただ、今はあの人に会いたい。

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