37 / 38
第37話「嫌いだ」
こんなくそ眼鏡なんて…俺の気持ちを一切無視するこんな最低野郎なんて…
大っ嫌いだ。
「最低だ……嫌いだ‼︎ お前なんか大っ嫌いだくそ眼鏡!」
目の前が涙でいっぱいで、体には力が入らなくて、こんな情けない自分も、俺を見下ろす眼鏡も全部全部……
「ゔ…ぐ……きら、いだ……お前なんか…グズッ…」
「……新 」
「っー⁉︎」
大きな影に覆われ、眼鏡がしゃがんで俺にキスをしようとしてきた。
咄嗟に振り払って押し退けると、ようやく視点が定まり眼鏡の顔が見れた。
「新…」
「もう…いいだろ……十分だろ……」
「新、俺は――…」
俺の名前を呼ぶ眼鏡の声が妙に優しくて頭が混乱する。
でも違う。こいつがどんなに優しく俺のことを呼んだって、心配そうな顔をしたって、こいつがやったことが許されるわけないんだ。
「あっち行け……お前の顔なんか見たくもない」
ほんとにもう顔なんて見たくない。
今の俺を見られたくない。
これ以上こいつに乱されるのはいやだ。
「…………わかったよ」
しばらく沈黙が続いたあと、眼鏡はひと言そう言い残し去っていった。
「うっ、グズッ……ズッ」
ひとりになった途端、また涙があふれる。
俺は一体どうしちまったんだ。
男に犯されて、男を好きになって、また……犯されて……。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
もうワケわかんねえ。
「グズッ……会長……」
ただ、今はあの人に会いたい。
ともだちにシェアしよう!