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01 わんわんは適度に褒められ構われたい。

明るくシュールに謎のテンションが合言葉の作品です。 混乱する方もいると思うので登場人物紹介を後で入れます。    こんにちは、わんわんです。  飼い主には自分でわんわんって言うなって怒られたりもしますけど名乗るのも面倒なんで、わんわんと呼んで欲しいです。   「圭人、けいと、けーいと!!」    ベタベタ引っ付いてくるラクダ色の髪の男は一応は彼氏。恋人というのが交尾の相手ならコイツ以外に彼氏はいない。ただ恋愛相手とかいないと生活に支障が出る相手とかならコイツは関係ない。なんともオレたちは微妙な関係だ。   「オレは毛玉ではない」 「また変なこと言って~」    コイツの発音だと圭人は毛糸にしか聞こえない。毛糸は猫がじゃれている毛糸玉のイメージが強い。前足でちょいちょいちょいっと。オレはわんわんなのでそういうことはしないワン。   「そーいや、ゴールデンウィーク実家に戻るんだっけ?」    名残惜しげに言われても戻らない理由なんかあるわけもない。オレの居場所は常に飼い主のそばだ。忠犬を気取りたい年頃です。そこらへんの事情は語ったことはないしこれから語ることもしないんでコイツからしたらどうでもいいですけどね。   「ゴールデンウィーク遊ぼうよ」 「いやだ」 「実家厳しいの?」 「部屋掃除とか忙しい」  オレの飼い主は気難しい。部屋が汚いのは許さないが自分で片づけないし外部の人間の手が入るのを拒絶するから幹部が部屋を掃除する。幹部で部屋が掃除できるような人間は二人ぐらいしかいない。掃除した先から物を壊す不器用な人間ばかりだから部屋掃除は主にオレの担当だったりする。去年の長期休みは部屋中が本当に酷かった。あっちの部屋が汚くなったからこっちの部屋で寝起きして、こっちの部屋も汚いからって最終的にホテルを転々としたらしい。  飼い主はダメ人間の見本みたいな行動をよくとる。オレの餌や散歩は忘れないからダメ人間でも別にいいんだ。飼い主がやらないことはオレがやればいいと賢いわんわんは思っております。   「俺より部屋掃除が大切なわけ?」    当たり前だろって言うとうるさいから無視。そのオレの態度をかわいいかわいい言い出すコイツは脳に異常をきたしている。最初は目がおかしいのかと思っていたけれど頭がおかしいんだ。朝から晩までずっとオレと居たいと思うなんて脳の異常に違いない。オレだって飼い主とは四六時中引っ付いてたいけどウザがられそうだから自重してる。コイツは犬のストレスを考えたりしない。構われすぎると円形脱毛症になったりするんだぞ。わんわん虐待禁止。   「メールと電話して、約束ね」 「無理無理。たぶん、バイトとかするし」    バイトというか飼い主を含めた誰かしらがお小遣いをあげるからアレしてコレしてって頼まれる。別にスナック菓子くれるだけでもお仕事はします。オレは優秀なわんわんです。   「けーとは俺と一緒じゃなくてさみしくねえのかよぉ」    甘ったれた声で嘘泣きをするコイツが学園内で俺様生徒会長と言われているのが信じられない。俺様らしさの片鱗もないヘタレじゃないか。オレの飼い主の容赦ない鬼畜さと理不尽さを思い出すとコイツのどこが俺様なのかサッパリ理解できない。   「メールは返せそうなら返す。……三日に一回ぐらい」 「ゴールデンウィーク中に一回だけしかメールしないって宣告!?」    落ち込みながらきちんとツッコミ入れてくるところはわりと好きだ。わんわんは適度に褒められ構われたい。  

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