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02 愛されキャラってつらいね。
実家というよりも飼い主の家に戻ってきました。実はいつも敷地をくぐる時、緊張します。オレの家ってわけじゃないから出て行けって言われたらどうしようって心臓ドッキドキ。
末端なんか入れ替わり激しいから学園にいるオレのことなんか知らなかったり忘れてたりするから誰コイツみたいな顔とかする。本当やめて。この家のわんわんだよ。
困っているとポチたまがやってきて構ってくれとじゃれてくるから遊んでると幹部の誰かが迎えに来てくれたりする。
ポチたまかわいいよポチたま。
「今日帰ってくるって連絡しただろ」
呆れる幹部その一に恐縮する末端の門番たち。武力重視で頭はよろしくない人間を門番に置くからいけないんだ。そのてんポチたまは優秀だ。オレを背中に乗せて遊んだ日々を忘れないでいてくれる。テンション高すぎるとオレの腕を噛み切ろうとしてくるのは危険だけどかわいいよポチたま。
「ポチ様がメロメロ状態になるのはコイツだけだからな。朝ちゃんだって機嫌悪かったらそっぽ向かれるし餌やってるオレにすら媚び売らねえんだぞ」
「侵入者の喉笛噛み切って食うに困らないから餌をあげてるぐらいで威張るなよ」
というかペットに餌をやらないのは虐待だって法律だか条例で禁止されてるって飼い主がいってた。子供に食事を与えないのもいけないんだって。生類憐れみの令ってやつだ。将軍様に感謝!
「死体を食べ物扱いすんなよ。ちゃんと殺さないようになってきたんだぞ?」
「飛んでるハトとかカラスをムシャムシャしてるの見たことある」
「グロいわぁ」
幹部その一はくたびれたオッサンだ。普通っぽい感性があるからっていう理由で幹部らしい。意味が分からないね。頭がおかしい人間ばっかりだと組織が回っていかないって話だから貧乏くじ引かされたり面倒事処理係なのかも。
オレもいずれはそんな面倒なことをすることになるのかもしれない。わんわんには免除とかないのかな。ないよね。わかってるよ。
「わんころ、朝ちゃんは明日まで帰ってこねえって」
「掃除して待ってる」
「あ、部屋ならキレイだぞ」
またまたご冗談をと思っていたら本当に綺麗だった。飼い主が人を雇わないのは知っているしオレが帰ってくるなら押し付けようと考えて幹部が掃除しないのは知っている。
「天変地異の前触れか?」
「なんかな、新しく入ってすぐに幹部候補みたいになった奴がいてな。そいつがマメで気が利いて何でもできるんだよな」
「みんなにかわいがられて男でハーレム作ってこの組織を内側から崩壊させようとしてるって?」
「何の話だ。あぁ、お前が潜入捜査してこいって言われた王道学園だっけ」
「生徒会を滅ぼす最終兵器、転入生! 編入生!! 外部生に特待生!!!」
「お前、そのテンションを真顔でやるのやめてくれよ。笑えばいいのか心配すればいいのか分からん」
苦笑いというか困った顔の幹部その一。
笑いたいなら笑えばいいと思うよ。
「顔面の筋肉は出来るだけ動かしたくない系の人間なんだよ」
「なんとか系っていえば許されると思ってんなら間違いだからな」
幹部その一は溜め息を吐いてポチたまを撫でようとして手を噛まれかけた。ポチたまはわりと人間嫌いだ。それか人間を食べ物だと思ってる。
「とりあえずニョロリに学校での話してやれば」
「蛇さんに今後のことも相談しないとだ」
「……今後といやあ、転入生がまたGW明けに来るらしいじゃネエか。さすが実験場」
「来年もまた来たりして?」
「むしろ夏休み明けとかにくるんじゃねえの」
「季節外れのって付いた方がいいらしいから夏休み前じゃねえの」
だらだらとその一なオッサンと話ながらオレは自室に向かう。とりあえず荷物を置いて制服を脱ごうとして蛇さんには制服姿のままの方がいいと思い直す。
蛇さんとの付き合いは飼い主と同じぐらいなので好みはバッチリ把握済み。制服フェチというかキッチリとしたタイプの服が好き。軍服やスーツなんてものに興奮から身悶えしだすのが蛇さんである。オレの制服も馬子にも衣裳って褒めてくれた。愛されキャラってつらいね。
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