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第1話 アンドロイドの願い

私には主と同じ形の体があります。主と同じように喋る事もできます。スポーツもできます。働く事もできます。  私は主以上に記憶力があります。主よりも早く計算できますし、膨大なデータを管理し必要に応じて抜き出す事もできます。主に最適解を与える事もできます。主の体温も心拍数も脈も瞬時に測り、そこから体調やある程度の感情を読み取る事もできます。  けれども私自身には感情がありません。体温も包み込む優しさもありません。私に恋愛感情を抱く主に、同じものを返せないのです。  しかし主はそんな私をとても大事にしてくださいます。メンテナンスは怠りませんし、乱暴に扱う事もしません。男性が女性を抱くのと同じように私と性行為をしたいと言われた時も、私の体が傷つくのを嫌って自らが女役になったくらいです。主は機械が詰まったこの固くて冷たい体を全身で受け止め、愛してくださいます。それはもう、まるで私自身にも体温があると錯覚してしまいそうな程に包まれているのです。これ以上の幸せが何処にありましょうか?  それでもいつか主が死を迎える日が来るでしょう。明確な日付など、流石に私でも分かりません。ですが貴方が幾度も私の手を取ってくださったので、私は貴方の体温を忘れはしません。  願わくばその日が来る前に、どうかほんのひと時だけでも私の手にも主と同じ温もりを下さい。私を愛し、大切にしてくださった貴方に、この両手から私の想いを伝えてください。  どうか主と手を繋いで何処へでも行ける今のうちに……   

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