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8/3(土) 2 from宗平

駅に着くがまだそこに春人の姿はなく、券売機横の壁に寄りかかり時間を潰す。 春人は今日連れてくる大学生の人と先に合流してから駅に来るらしい。 学校同士が近いからと言って高校生と大学生…しかも5個も年齢が違うので接点など無いに等しいが、2人で花火に行く予定だったというのだから結構親しい間柄なのだと予想できる。 やはり俺は春人のことを何も知らないのだと自覚した後に未だ真相を知らない春人の"秘密"のことを思い出す。 もしかしたら今日連れてくる人はそれを知る人物なのかもしれない。 一昨日観戦に来てくれた時も屈託ない笑顔で笑ってくれた春人の、俺が知らない裏側…。 考えるほどに胸の奥から何かがジワリと滲んでくるような、不快な気分になった。 「お待たせ宗平!えーっとこの人が…。」 暫くしてからやって来た春人が言うと隣に立つ男の人が1歩前に出て微笑む。 「はじめまして。舞山って言います。なんか今日はお邪魔しちゃってごめんね。」 それに対して、いえ、と軽く会釈して俺も自分の名前を名乗る。 なんだか、余裕のある感じの人だなぁ、とまだ自己紹介しかされていないのに感じる。 5個も違えば当たり前なのだろうが、先程までこの人と春人の関係をあれこれと考えていた自分と比べ少し恥ずかしくなった。 乗り込んだ電車の中で他愛のない話をしては、春人が時々舞山さんに話を振る。が、春人が舞山さんの名前を呼ぼうとする度に「ま…舞山さん」とつかえながら呼んでいることに気が付いた。その雰囲気から、普段は違う名前で呼んでいるのだと推測することができた。 舞山さんは下の名前を名乗らなかったがもしかして「ま」から始まる名前で、春人は普段は舞山さんを下の名前で読んでいるのか? だとしたらやっぱ結構仲良いよな… 「舞山さんとの近さ」を知られたくないから俺の前では違う呼び方をしているのではないかと邪推して口元を少し歪める。 そんなことをしているとポケットに入れていたスマホがメッセージを受信した。 「優奈ちゃんからだ。『何号車に乗ってる?』…ってここ何号車だ?」 そのままメッセージを読み上げ春人と車両番号の表示を探し辺りを見回していると舞山さんに話しかけられる。 「一緒に行く子…優奈ちゃん…って言うの?」 「そうですけど…」 なんだ?何か覚えのある名前なのか? 舞山さんの少し青い顔を訝しげに見ていると春人に背中を叩かれた。 「宗平!駅着いちまったよ!」 「え!?」 ハッとして窓の外に目を向けると春人の言葉通り、過ぎていくホームと人混みが見えた。 焦って返信を打とうとするがまだ自分たちのいる車両が分からない。 「あ!優奈ちゃん!」 更に聞こえてきた追い討ちのような声に諦めに似た気分になり優奈ちゃんには、乗り込んだらそのままそこで待っててほしい、とメッセージを送りスマホをしまう。 「とりあえず俺らが車両移動しようぜ。」 たぶん速度的に1つ後ろの車両にいるはずだ。 春人が頷いたことを確認し車両を移動しようとした時、後ろにいた春人が何事かを焦ったように口にする。 振り向くとそこには何故か電車を降りたらしい舞山さんとそれを追いかけるように自分も降りようとする春人。 「おい、春人!」 急いでその手を掴むが春人は一瞬舞山さんの方へ目を向けた後「今度埋め合わせするから!」と俺の手を払い電車を降りてしまった。 払われた手が、空気を引っ掻かくように1度震える。 閉まる扉と動き出す景色。 駆け寄る春人とそれを見て笑う舞山さん。 走り出す電車の中で、里沙ちゃんが同性と付き合っていたという話を思い出していた。

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