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甘い蜜(3)

 自分から言い出したことなのに。もしや、からかうつもりだったのか。それとも大人になった亮汰のモノなど見たくはないか。きっとそれだろう。  急に熱が冷めた。馬鹿な真似をしようとした。 「やっぱり……」  やめると口にする前に、隆也にズボンと下着を下ろされてしまう。 「まって、隆也さん」  あの頃の、綺麗な色をしたモノはもうない。幻滅しただろうと思ったが、 「ここも大人になったね」  と口角をあげた。その瞬間、カッと熱が上がる。 「なんだよ、汚いって?」  恥ずかしさから憎まれ口を叩く。だが、隆也さんは目を弓なりに細めて微笑んだ。 「うんん。大人になった姿を見れて嬉しいよ」  手が触れる。 「んっ」  ゆっくりと指が形をなぞり、その度にゾクゾクとした感覚が襲う。 「はぁ」 「亮汰は先を弄られるのが好きだったよね」 「ん、あ」 「亮汰の味、久しぶりだ」  料理人の舌で、じっくりと味わうように先から根まで舐める。 「隆也さん、もういいって。でるから」  深くまで咥えて、じゅるじゅると厭らしい水音をたててしゃぶられる。 「ねぇっ」 「いいよ、中にだして」  亮汰へと向けられる視線が、余計に欲を煽り立てる。  吸い上げられて我慢できずに口の中へと放ってしまった。 「ごめん。これ使って」  ちり紙を数枚とって口元を押さえるが、首を横に振るい飲み込んでしまう。 「あっ、料理人の舌なんだぞ。馬鹿になったらどうするんだよ」  まさか飲み込むとはおもわず、恥ずかしいやらなんやらで、そんなことを口走っていた。 「このくらいでならないよ。それよりも、ここは俺が教えたけれど、こっちは誰に教わったの?」  突起した乳首を噛まれて、たまらず跳ねた。  大人になるにつれ、自慰をするときに下だけでは足りずに、胸を弄ってみたら気持ちが良くて、触っているうちに敏感になった。  そんな恥ずかしいことは言えない。唇を噛みしめる。 「亮汰、イイ子だからお兄ちゃんに言いなさい」  親指が、無理やり口をこじ開けて入り込む。 「や、指」 「で、誰に教わったの?」 「ん、自分で、弄った」 「そうなんだ」  ちゅっと吸われて舌先でころがされて、それがきもちよくて頭が惚ける。 「隆也お兄ちゃん」  中学のころに戻ったかのようにそう口にすれば、隆也の顔が近づいて口づけされた。 「んぁっ」 「亮汰、りょうたっ」  何度も角度を変えて吸われ、舌が絡みつく。隆也と触れ合っている、それが心と思考をとろけさせる。 「はぁ、隆也お兄ちゃん、俺、ずっと待ってたんだよ」  目から涙がぽろぽろと落ちる。その瞬間、隆也は身を起こした。 「ごめん」 「え、隆也さん」  隆也は真っ青な顔色をしていた。それを見て、まるで夢から覚めたかのように頭がはっきりとする。 「俺、ホテルに行くよ」  立ち上がり和室へと向かう隆也の後を追うために立ち上がるが、力が入らずにへたりこむ。 「隆也さんっ」 「ごめんな。結婚式にはちゃんと出席するから」  と財布だけを手にし、部屋を出て行ってしまった。

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