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雀夜・3
「確かお前、今日が誕生日だったな」
ふいに話題が変わり、俺は目をしばたかせて頷いた。
「俺らは来てから知ったからよ、プレゼントとか何も用意してねんだわ」
「別にいいよ、そんなの」
気遣いが嬉しくてはにかむと、雀夜は俺の前髪をかき分けて額にキスをした。
「代わりに、お前が忘れられない夜にしてやる」
俺なんかじゃ一生言えないようなクサい台詞。だけど悔しいほど、雀夜にはそれが似合っている。
「……俺も雀夜に触りたい。ねえ、手、ほどいてほしいんだけど」
「それは駄目だ」
あっさりと却下されてしまい、俺は口を尖らせた。
「雀夜も俺と同じでしょ」
「同じ? 何がだ」
「セックスに慣れすぎて、普通じゃ満足できないんでしょ」
「………」
どうやら効果アリみたいだ。雀夜は眉をひそめて俺をじっと見ている。
「俺もそうだもん。セックスなんてオナニーの延長みたいなモンで、射精はしてもちっとも満足じゃない。……でも俺なら、雀夜を気持ちよくしてあげれるよ」
反応を伺うように雀夜の目を見ると、その目がふいに鋭さを増した。
「そこまで言うなら外してやる」
手首を束ねていたネクタイが解かれ、俄然やる気が出てきた。
中途半端に脱げかけていたシャツを脱ぎ捨て、雀夜の大きな体を強く抱きしめる。
雀夜の口が俺の乳首に喰らい付いた。そうしながら、はしたなく大股を開いた俺の股間へ左手を下ろしてゆく。
「あ、ん……。気持ちいい、もっと……」
下着の上から撫でられ、腰がひくりと動いた。俺もお返しに、雀夜のシャツの中へ手を入れて直接背中を撫で回す。雀夜の肌も、少しだけ汗ばんでいた。
音をたてて俺の乳首を吸っている雀夜。至近距離で雀夜の伏せられた睫毛を見ていると、なんだか形容しがたい優越感が込み上がってくる。これほどのいい男とセックスできるなんて、俺はなんて幸せ者なんだろう、なんて考えが浮かんでくる。
学生時代も今も、俺は「選ばれる側」の人間だった。言い寄ってくる男が生理的に無理なタイプじゃなければ、それこそ片っ端から、誰とでも関係を持った。淫乱ビッチとか男の風俗嬢とか、不名誉なあだ名を付けられていたことだって知ってる。同じネコの男からは徹底的に嫌われていたことも。
それでも誰かを本気で好きになることはなかったし、また誰からも本気で愛されることもなかった。それでいいと思っていた。セックスに特別さなんて求めていない。こんなの、ただのストレス解消だ。
「雀夜っ、あ……。反対側も舐めて……」
顔を上げた雀夜が、右側の乳首に唇をかぶせる。俺は開いていた片方の足を曲げ、脛で雀夜の股間を擦った。ジーンズの硬い感触。その向こう側に、雀夜の男の証があるのが分かる。さすがにまだ反応していない。ということは、通常時でこの大きさなのか……。
「なぁ、雀夜も脱いでよ。雀夜の体、見たい」
「まだだ」
「ずるい……あっ!」
俺の足の付け根辺りを撫でていた雀夜の手が、下着の隙間から中に入ってきた。
「やっ。あ……」
「……十九のくせに毛も生えてねえのか?」
「本当の誕生日は二月だよ……。だからまだ十八歳……」
問題にすべき点がそこじゃないのは分かってるけど、なんとなく気恥ずかしくてはぐらかしてしまった。
「なんだ、誕生日は嘘なのか。じゃあ俺もプレゼントする義理はねえな」
雀夜が意地悪く笑う。
「……この方が、感じやすいかもって……。余分なムダ毛は処理してんだよ……」
観念して白状すると、雀夜は俺のそれをぎゅっと握って低い声で言った。
「最初から正直に言え。じゃねえと、もうしてやんねえぞ」
「ごめん……だって、恥ずかしっ……くて」
「今更そんなキャラじゃねえだろうが」
雀夜には何もかもバレているのか。それなら、今俺が感じてるのも演技じゃないことくらい分かってるんだろう。俺がしてほしいことも、時間がなくて焦ってることも。
「脱がすぞ」
「う、ん……」
下着が引っ張られて一気に下ろされる。俺は頬を赤く染めて足を開き、自分の屹立したそれを雀夜に見せつけた。
「どうかな」
「何がだ」
「興奮する?」
雀夜はつまらなそうに目を細めて、別の意味で俺の体を熱くさせた。
「もう、なんだよ? 雀夜って一体、どんな奴がタイプなのさ」
憤る俺の両膝を裏から支え、雀夜が更に俺の足を開かせる。
「タイプなんかねえよ。強いて言えば、体の相性が良ければ誰でもいい。それこそ、ガキでもな」
「……本当に節操無しなんだね。人のこと言えないけど」
「だからセックスが終わらないうちは、絶対に相手を好きにならねえ」
「じゃあ早く抱いてよ。絶対に俺のこと好きになるはずだから」
ふて腐れて言う俺の両膝を支えたまま、雀夜が中心に顔を落としてくる。
「順序ってモンがあるだろ」
「――あっ!」
じゅぷ、と卑猥な音を立てて、雀夜が俺のぺニスを口に含んだ。
「あっ、ぁっ……!」
小振りな俺のそれを、雀夜が奥まで咥え込んでくる。それでもまだ口内に余裕ができるらしく、唾液を絡ませながら舌で滅茶苦茶に擦られて頭の芯が熱くなった。
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