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【番外】舞踏会にはペット同伴で(1)

えー。みなさんこんにちは。 いま、おれは、こーきゅーひゃっかてんにいます。 とてもいごこちがわるいです。まさしくばちがいです。 てんいんのおねえさまのえがおが、おれにつきささっているのはきのせいでしょうか。 はやく、このばからきえさりたいきもちでいっぱいです。 「ありがとうございました」 店員に見送られて、槙野さんがようやく店から出てきた。 飼い主が買い物中に店先で待たされていた犬のように、俺は槙野さんに駆け寄る。 「槙野さん、いつもこんなところで買い物してるんですか?」 「いや、ネクタイだけな。ちょっと高いけどここのデザインが好きなんだ」 まあなー、確かに槙野さんのスーツ姿かっこいいもんなー……仕事中、いまだについつい見惚れちゃうし。 もちろんスーツに限らず、普段着でも、なんと寝間着までもがかっこいいよ。 えへ。 俺のご主人様は何を着てもかっこいいの。 ちなみに、普段着の一部と寝間着の場合はエロさがプラスされてエロかっこよくなるわよ! それはもう理性も吹っ飛ぶってもんだわ!煩悩待ったなしよ! 俺的お気に入りNo.1の、ぴったりサイズで薄手の白のカットソーと、黒のショート丈Vネックカーディガンの組み合わせの槙野さん(清潔感とエロが同時に存在するっていう奇跡がおきるの)を思い出して、密かにおネエモードを発動させていると、突然槙野さんが言い出した。 「そうだ、神崎の服も見ていこうか」 「えぇっ、俺はいいですよぉ。お金ないし」 「何言ってるんだ、俺が買うんだからいいだろ?おい、こっちだ」 エスカレーターに逃げようとした俺の腕を掴んで、槙野さんは目的地をもう決めているのか、迷いなく歩いていく。 「うひー」 俺が小さく悲鳴を上げていると、槙野さんがぽんと俺の背に手を添えた。 「たまには俺にも我儘言わせてくれよ。神崎に俺が選んだ服を着てもらいたいんだよ」 「うぅ」 そう言われてしまうと、抵抗できなくなっちゃう。と、いうか嬉しくて照れちゃう。 ちょっと顔を赤くして槙野さんに大人しくついていくことにした。

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