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【番外】舞踏会にはペット同伴で(2)

「んー、くれめんたいん?」 槙野さんが連れてきてくれたのは、『Clementine』というブランドのお店だった。 カジュアルなものからちょっとフォーマルなものまで、いろいろ並んでる。 「うーん、そうだなぁ……どれが似合うかな」 槙野さんがなんだか楽しそうに服を見始める。 俺はできるだけ値札を見ないようにしながら、店内を一巡りしてみた。 大体20代をターゲットにしてる様子で、お、と思うようなアイテムも何点かあった。 「神崎ー、これなんてどうだ?」 もう槙野さんは店員さんと一緒に何着か見繕ってくれていて、服を手渡され、あれよあれよという間に試着室に押し込められた。 そこからは、俺の、俺による、槙野さんのためのファッションショウが繰り広げられた。 四、五着は着たのかな。最終的に、満場一致で鈍く光るシルバーのボタンがかっこいい濃いグレーのジャケットと、それに合う細身のパンツを買ってもらうことになった。 槙野さんが会計している間、俺はなんとなく店内のポスターをぼんやり見ていた。 プラチナブロンドのモデルさんが、椅子に腰かけて物憂げに外を眺めていたり、木陰で誰かに笑いかけていたり。 ……。 なんか癪に障るな。この人。 いや、見た目は俺よりいくつか年上くらいの美形のお兄さんなんだけど。 なんとなく、こう、ムカつく。 会計が終わった槙野さんが来て、ポスターに目をやった。 「もう完全にモデルも慣れたもんだよな。本人は見られるの嫌がってるけど」 ん?なんの話? 俺がキョトンとすると、槙野さんは首をかしげた。 「ポスター見てたんじゃないのか?」 「見てました……けど」 「西嶋だぞ、あれ」 は?はぁぁ?あ! 言われてみれば、この人知ってる! 西嶋さんといえば、俺に対しては睨んでくるか、挑発的な態度をとるかのどっちかだから印象最悪で気がつかなかったけど、そういえばこんなアイスブルーの瞳で美形だった。 「西嶋さんて、モデルの仕事もやってるの?」 二足のわらじ的な? 「クレメンタイン専属でな。ここ、西嶋のご両親のブランドなんだ。ご両親ともデザイナーで、西嶋のために服を作ってたんだけど、そのうち本格化してきてブランドを立ち上げたんだってさ」 「あ、それで20代向けな商品展開なんですね。っていうか西嶋さん向け?」 「そう。西嶋が社会人になってから、スーツも扱い始めたんだ。ああ、ちゃんと子供服部門もまだあるらしいぞ」 「西嶋さんって、愛されてるんですねぇ」

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