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【番外】甘えホーダイ月額キス31回(14)
「は、ぁ……。槙野さん、ぎゅっ、て、して」
絶頂を迎え全力を出し切って、中身が抜けた俺は、槙野さんの隣に寝転がった。
「ん」
優しい抱擁と、それからキス。
まだちょっと震えてる指で、俺の額の汗を拭ってくれた。
心もち頬を赤くして、
「神崎、優しいから、気持ち、よかった。ありがとな」
槙野さんはなぜかたどたどしくそう言って、俺から槙野さんが見えないように、頭からぎゅっと抱きしめられた。
熱い。
「槙野さん照れてるの?」
「違う。うるさい」
「だって槙野さん熱い」
「熱くない。神崎が冷たいだけだ」
「ひどい! 俺冷たくないもん。ほら、温かいでしょ」
「やめろ。それを押し付けるな。なんでまだ勃ってるんだよ」
「んふー。槙野さんやっぱり照れてるー」
「神崎うるさい」
「ん”な”ぁーお」
二人でいちゃついてたら、部屋の外から唸り声が聞こえた。
「なに?」
俺は一瞬本気で何か分からなくて、槙野さんを見上げた。
「! 鈴」
そういえば鈴ちゃんと珠ちゃんを、リビングにほったらかしてたんだった。
二匹ともいつも夜は寝室で寝るから、ドアが開くの待ちかねてる。
俺と槙野さんは慌てて最低限の衣類だけ身に着けると、寝室のドアを開けた。
ごすっ、とドアに何かが刺さったような音がして、廊下が見えた。
「にい」
そこにちんまり座ってこっちを見上げていたのは、真っ白な一匹の子猫。
「あれ? 珠ちゃん、鈴ちゃんは?」
「……神崎、こっちだ」
ため息をついた槙野さんが俺を押して廊下に出る。
「んなん♡」
「今更可愛い声出してもだめだ、鈴」
俺が開けたドアの……裏側。そこに白黒ぶちの猫がぶら下がっていた。
化粧板に空いた穴に、両前足の爪をひっかけて、ぶらんと。
「家具に爪を立てるなと言ったろ?」
ちょっとだけお怒りモードで、槙野さんは鈴ちゃんをドアから外して抱き上げた。
「はぁ。……さっさと寝るぞ」
「え、槙野さん!?」
ちょっと鈴ちゃんはまだ廊下で待ってて。
「なぁーお」
すぐにドアを閉めて、槙野さんの腕を引いてベッドに押し倒した。
「な、なんだよ神崎。どうかしたか?」
裾の前を気にして両手で引っ張るその仕草が!
パジャマの裾から見えそうで見えないお尻が!
まっすぐ伸びた白い生足が!
俺を誘ってるんです!
裾がそんなに気になるなら、なんでパジャマを上だけ着たんですか!
「槙野さん」
「うん」
パジャマを押さえながら上目遣いで見上げてくる槙野さん。
「誘ってますよね?」
「は? いや、別に」
「もう一回訊きます。……誘ってますよね?」
「だから、誘ってない」
「聞こえません。二回戦しましょう」
欲望を止められるわけないじゃないですか! そんな恰好して、俺を誘ったら!
パジャマの上からお尻を撫でて、首筋にキスをして、ようやく槙野さんは俺が本気だってことに気が付いた。
「神崎、落ち着け。もう寝る時間だ、やめろっ。鈴っ! 鈴ー!」
一時間後、待ちくたびれた鈴ちゃんはまたドアに穴をあけちゃった。あーあ。
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